右足から放たれたボールが、緩やかなカーブを描きながらネットに突き刺さった。今年45歳を迎える日本サッカー界の「キング」のゴールに、いったい何人の国民が元気づけられただろうか。

震災後の対応で明暗が分かれたJリーグとプロ野球

『TSUNEO』(C) 小田明志
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 先月29日に開催された「東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ 日本代表対TEAM AS ONE(Jリーグ選抜)」は大成功を収めた。

 日本代表はもちろん、Jリーグ選抜にも豪華な顔ぶれがそろい、サッカーファンならずとも楽しめる試合だった。

 Jリーグが震災3日後に3月の残り試合中止を決定し、29日の国際親善試合をチャリティーマッチに切り替えたのは、非常に素早い判断だった。

 会場である長居スタジアムの使用料は大阪市の厚意で免除され、試合を150カ国で生中継することで得た放映権料も義援金に回された。

 選手だけでなく、運営側も被災地への想いを一つにした様子が見て取れたことも、チャリティーマッチ成功の一因と言えるだろう。

 その反面、ヒンシュクを買うことになってしまったのがプロ野球のセ・リーグだ。震災直後から25日からの通常開幕を主張し、電力が足りないと聞けば今度はたった4日延ばした29日の開幕を宣言。大幅な日程の延長を拒否した裏に、巨人の渡辺恒雄会長とそれに同調した他球団経営陣のエゴが見えた。

 震災後の対応で明暗が分かれたJリーグとセ・リーグ。これは単なる経営者判断の違いだけではなく、それぞれのシステムの違いから生じたものではないだろうか。

地域密着型へのシフトに後れを取ったセ・リーグ

 Jリーグは開幕当初から「地域密着」を理念に運営されてきた。これは、経営母体である企業はあくまでもスポンサーにとどまり、市民・行政・地元企業が連携してチームを支えることで地域全体を盛り上げようという考えに基づいたものだ。

 最近はパ・リーグの球団が「地域密着」の理念を経営に取り入れることで、観客動員数を増やしている。例えば、球団本拠地の地方移転によって人気を獲得したソフトバンク、日本ハム、楽天はその代表格だろう。

 それに対し、セ・リーグはれっきとした「企業スポーツ」である。球団はあくまでも企業の広告塔であり、市民のものではない。各球団は全国区の人気を誇る巨人との試合が頼みの綱という、昭和の時代からの経営スタイルを続けている。