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 「老後資金2000万円不足問題」が物語る通り、定年後もなお働き続けることが求められる時代が到来しつつある。少子化により若い人材の雇用が困難となっている企業にとっても、シニア人材は貴重な戦力だ。ここでは“シニア人材の活躍”における現状と課題について考えてみよう。

高齢者が働くための仕組み・制度は充実の一途

 少子化が進んで若い戦力を確保することが難しくなっている。また、「健康寿命」が延び、元気に動ける期間が長くなっている現在、シニア人材を戦力として雇用することは経済界全体にとって重要課題のひとつといえる。国の政策としても、2012年に改正された高年齢者雇用安定法では、希望者に対する65歳までの雇用を企業の義務とし、中高年離職者の再就職援助に取り組むことを求めている。内閣府が設置した「人生100年時代構想会議」(※1)も、『人づくり革命基本構想』の中で「継続雇用年齢の引上げに向けて環境整備を進める」などとシニア層の雇用促進を提言。厚生労働省は“事業主に望まれること”として、シニア層への職域拡大や、雇用形態の多様化をはじめとする雇用管理制度の改善を呼びかけている。

 ただ、必ずしも定年後に同じ職場あるいは同じ職種で継続雇用・再雇用される人ばかりとは限らず、これまで縁のなかった業界で働いているシニアも多いのが実情だ。となると、職業訓練などを通じて新たな職場・職種で求められるスキルの獲得が不可欠となる。

 こうした状況を踏まえて、東京都の「東京都立中央・城北職業能力開発センター 高年齢者校」など、各自治体が職業能力開発のための施設や制度を準備。シニア層の人が無料で、ビル管理、家事代行などの生活支援サービス、ケアワーカーといった仕事について学べるようにしている。さらに、先の『人づくり革命基本構想』は「中高年を対象に基礎的なIT・データスキル習得のための教育訓練を拡充する」「国・地方自治体・関係団体が一体となって、高齢者の介護分野への参入を促進する」としており、政府主導のシニア向け職業能力開発施策が充実していくことは間違いないだろう。

 また、これまでなら転職や正社員雇用が難しかった40代・50代・60代以上の求人情報に特化した『マイナビミドルシニア』(※2)のようなサービスも誕生。「定年後の仕事として」「資格取得を応援」「未経験者も研修でサポート」「無理のないペースで働けます」……など、シニア層の実情や働き方への希望に配慮した文言が並ぶ求人案内で賑わいを見せている。新たなスキルを磨きつつもゆったりと働き、老後資金を得たいというシニアと、若い人材の確保に苦しんでいる企業とを結びつけるこうしたマッチングサービスは、今後も増えていくはずだ。