中国当局、アイ・ウェイウェイ氏の身柄拘束

中国の芸術家、艾未未〔AFPBB News

 福島第一原発で決死の放水作業が続いた先週末、北京国際空港で1人の中国人男性が身柄を拘束された。男の名前は艾未未(Ai Weiwei)、国際的に著名な中国の現代芸術家の1人である。

 この名前にピンとこない方でも、あの北京オリンピックの「鳥の巣」スタジアムの芸術顧問だったと言えば、少しはお分かりいただけるだろう。

 艾未未は北京空港から香港に向かう途中だったようだが、4月3日以来、同氏とは一切連絡が取れていないという。

 4月6日付環球時報は、艾未未が「多くの機会に中国国内法の犯してはならない一線に抵触しかけていた」と論評したそうだ。どうやら今回の艾未未拘束も、過去数週間の中国政府による活動家取り締まりキャンペーンの一環のようである。

欧米は懸念表明

 米国務省は4月4日の記者会見で中国に対し艾未未を即時釈放するよう要求、5日にはヘイグ英外相が「艾未未氏の即時釈放を希望する」と発言した。さらに、6日には豪外務省報道官も懸念を表明するなど、欧米諸国の反応は実に素早かった。

 これに対し、日本政府は沈黙を守っている。4月5日の外務大臣定例記者会見でも艾未未拘束に関するコメントはなかった。記録を読む限り、やりとりの大半は大震災関連のもので、出席した記者団からも同氏の釈放に関する質問は一切なかったようだ。

 欧米諸国では大きく報じられているのに、日本のマスコミは質問すらしないのか、などと突っ込みの一つも入れたくなる。大震災の影響かもしれないが、やはり日本では「中国の人権問題」は大きなニュースにならないのだろうか。

中国の現代芸術家たち

 2000年10月から足かけ4年の北京在勤で筆者は広報文化を担当した。中国人芸術家に会うのは重要な仕事の1つである。政治体制は決して魅力的ではないが、文化活動の方は、伝統文化にせよ、現代文化にせよ、実に魅力的なものが多い。

 日中文化交流というと書道、茶道など伝統文化を想像しがちだが、国際交流基金は現代芸術分野の交流にも力を入れていた。恥ずかしながら、「ビエンナーレ」が2年に1度開かれる大規模美術展覧会を意味するイタリア語だと知ったのも、北京在勤時代である。

 2000年末、自宅近くに現代芸術のギャラリー兼レストランが開店し、英語を喋るオーナー夫妻と仲良くなった。それが縁で筆者は中国の現代芸術家たちとも親しくなったのだが、当時の記録を見る限り、艾未未や夫人の路青に直接会ったことはない。