ワークフローを見直し、効率化できるポイントを探る

 そこで私が提案したいのは、「ワークライフバランス」の見直しの前に、まず「ワークフローバランス」の見直しを先に実施して欲しい、ということです。そもそもなぜワークライフバランスが大切だといわれるようになったかというと、深夜や休日に日常業務が食い込んでいくことがあるからです。

 そこでまず、平日の定時内に日常業務が収まるようにワークフローを見直し、その状態を保つために、経営者や上司は欲張ってさらなる仕事をそこにねじ込まないようにする。もし業務を増やしたいのなら、人員を必ず採用する。それを徹底さえすれば、一般社員の仕事が深夜や休日にまで食い込むことはないはずです。そもそもワークライフバランスの議論自体が起こらずに済むわけです。

 ワークフローの見直し方のポイントはいくつかありますが、その一つに「今の時代にマッチしているワークフローかどうか」という点があります。よくあるケースとして、「うまく回っている会社や部署ほど、数年前、数十年前のワークフローがそのまま残っている」というケースがあります。業務上うまくいかなかった時は、どの会社や部署でもワークフローの見直しを必然的に行うでしょうが、逆にそういう機会がない場合は、時には数十年も見直しをしないままのワークフローというものが存在し続けてしまうことがあります。

 それ自体は悪いことではないのですが、今よりも効率化を図りたい、人手も足りなくなってきている、ということであれば、そこが見直しできる一つの狙い目です。なぜなら、数年、数十年の間に、パソコン、スマートフォン、クラウドなど、ワークフローの効率化に役立つツールが数多く登場してきています。そうした中でも長期間ワークフローが変わっていないのは、それらを導入していないということですので、「手作業、アナログでやっていたものが、ソフトウェアで作業時間や人員を激減できる」という工程が必ず見つかるからです。

 ワークフローの見直しを定期的に行うことによって、フルタイムで週5日勤務しないとダメだと思っていた業務の中に、「この作業は自宅でもできる」、「これは3日以内に処理すればいい仕事だから毎日出勤できない人でも可能」というものが出てくると思います。そうした仕事に、「諸事情でフルタイム勤務はできないけれど、できる範囲で働きたい」というような人などをマッチングさせていけば、会社と社員、双方が満足できる「ワークライフバランス」が成立します。それにより、無駄のない人件費配分ができ、生産性も上がり、会社も利益が確保できる。同時に社員のライフスタイルも充実させることができます。

 特に近年のソフトウェアは、年ではなく月単位のレベルで機能が向上していますから、1年に1回は各部署でワークフローの見直しをすることをお勧めします。総務人事部門は、最新のソフトウェアなどをリサーチし、自社のワークフローと見比べて、改善できそうな部分を各部署や会社へ提案、導入のフォローをしていく。このような業務でも十分会社の生産性を上げる、つまり利益を押し上げる貢献ができるのです。