サイレントの裏事情――採用予備軍を確保するため
なぜ企業が「サイレント」なのかを理解している学生も、少ないがいる。
「連絡する手間やお祈りしたらもう選考復帰させられないという理由があるのはわかるが、サイレントはするべきではないと思う」(東京農工大学大学院、理系)
この学生が書いている通り、サイレントにする理由のひとつは「手間」だ。大手企業のサイレント比率は高いが、応募者が多く、選考で落とす学生の数も膨大だからお祈りメールでもかなりの手間になる。
「お祈りしたらもう選考復帰させられないという理由」は「手間」よりも大きな理由だろう。企業は採用計画を立てて行動しており、採用予定数も事前に決めて、採用活動を展開している。そして採用活動の仕上げとして面接が位置づけられ、採用予定数に達するまで内定を出す。実際には内定辞退を見込むので、予定数より多い学生に内定を出す。しかし内定辞退が多くなり、予定数に届かないのはよくあることだ。そこで当落線上で採用に至らなかった学生を採用予備軍として確保するため、不合格通知を出さないのだ。企業の勝手な都合だが、サイレントにはそんな裏事情がある。
企業の品格を汚すサイレント
確かに数千、数万の応募者がいる大手の場合、落とす学生の数は膨大。お祈りメールといえども手間かかかるし、発送ミスが起こる可能性もある。また内定辞退者が多い場合の採用予備軍も必要だろう。といってサイレントしていいという理由にはならないだろう。人事は「サイレントはしない」と決意すべきだと思う。
面接会場に学生を招いておいて、落とした学生を放置する企業は、自らの品格を汚していると思う。少子高齢化が進み、現在は労働力不足。新卒マーケットも売り手市場だ。これからさらに人は少なくなる。選考も「選ぶ面接」から「選ばれる面接」へと変わるだろう。そして品格のない企業の名前はソーシャルメディアで拡散する。そんな時代になれば、サイレント企業に人は集まらないだろう。
また大手企業では、CSRやコンプライアンスを重視し、社会に対し宣言しているはずだ。コンプライアンスにしてもCSRにしても根底には一貫した誠実さが必要だ。学生に対しサイレンとするのは、自ら宣言しているコンプライアンスに反していないだろうか。熟考を期待したい。