HR総研:就活生が苛立つ「サイレントお祈り」

 選考解禁日の6月1日から1週間が過ぎた。もっとも5月以前に選考は始まっていたから、多くの学生が面接を受け、合否を判定されたはずだ。人事は合格者に当然連絡をする。不合格者にも「今後のご健闘をお祈り申し上げます」という「お祈りメール」を出す。この「お祈りメール」は学生に不評だ。ところがその「お祈りメール」を出さない企業が増えている。連絡が無いので、学生は不合格かどうかがわからない。これを「サイレントお祈り」、あるいは「サイレント」と言う。その実態を紹介しよう。

大手ほどマナー知らずで、面接後でも4社に1社が「サイレントお祈り」

 採用、人事関連の調査研究機関であるHR総研は「書類選考の合否連絡」と「面接後の合否連絡」を調査をしており、「サイレントお祈り」の実態が判明している。

 2018年度新卒採用での調査(2017年3月調査)を見ると、71%の企業が書類選考の合否を全員に連絡しているが、29%は「合格者のみ」。不合格者は書類選考に落ちたことすらわからないのだ。

 企業規模別に見ると、大手ほどマナー知らずで「1001名以上」の企業の36%は不合格者に連絡していない。これは相当に高い比率だ。超大手の有名企業には数万通のエントリーシートが集まるから、もっとこの数字は高いだろう。

 「面接後の合否連絡」は書類選考ほどひどくはなく、中堅・中小の「サイレントお祈り」企業は1割未満だ。しかし大手はぐんと高く23%もある。つまり4社に1社は「サイレントお祈り」企業なのだ。

HRプロ

ほとんどすべての学生が経験し、「やめて欲しい」と訴えている

 学生は大手に集中するから、ほとんどすべての学生は「サイレントお祈り」を経験している。経験しない学生は例外的な存在だ。そして学生は怒り、恨み、苛立っている。

 HR総研が昨年6月に2017年卒生を対象にした調査で、「就職活動中、採用する企業側に改善してほしいと感じたこと」を聞いている。もっとも多いのは「やめて欲しい」という訴えだ。何度も「サイレントお祈り」を経験していることがわかる。この切実な声にサイレント企業は何と答えるのだろうか?

「サイレントお祈りはやめて欲しい。結果報告時を明確に教えて欲しい」(京都大学、文系)
「サイレントはなくしてほしい。合否に関係なく早く連絡してほしい」(関西外国語大学、文系)
「選考の合否にかかわらず連絡をくれないと困る。合否の結果を伝えるまでが面接だと思う。サイレントお祈りはその企業の印象を悪くするだけ。落とすなら落とすで早く連絡をくれれば学生はすぐに切り替えできる。合否の連絡はマスト、できれば早くくれと言いたい」(横浜国立大学、理系)
「サイレントで終わりにするのやめて、合否に関わらず連絡して欲しい」(奈良県立大学、文系)
「サイレントはなるべく少なくしてほしい。最終面接ぐらい合否の連絡をしてほしい」(東京女子大学、文系)
「サイレントはやめてほしい。せめて合格者だけに通知する旨を就活生に伝えてほしい」(信州大学、文系)
「合否結果のサイレントはやめてほしい。今か今かと待つのは心臓に悪い。ダメならダメでさっさと言ってもらえると次に進める」(甲南大学、文系)
「サイレントくらいなら落選のメールが欲しい」(横浜市立大学、文系)
「学生にもう少し人権をください。せめてお祈りメールは出してほしいし、出すのを早くしてほしい」(一橋大学、文系)

裏表のある企業の言葉と人事のマナーに不信の眼差し

 企業に対して不信感を募らせる学生も多い。採用担当者は学生に「社会人としてのマナーを守れ」「時間厳守」と言っているのに、企業はマナーを守っていないではないか、と怒っている。

 大人の社会には、建前とホンネが絡まってできるウソが多い。しかし選挙に行かない若者はこういうウソに遭遇したことが少ないから、裏表のある企業の言葉に怒るのはもっともなことだ。

「サイレントお祈り。報告連絡相談ができない社会人は要りませんと言っておきながら、そちらができていないぞ」(一橋大学、文系)
「サイレントで不合格を伝えるなら結果を伝える期間を短くしてほしい。待っている時間をもったいないと思う。また、合格者のみに連絡なら事前にそう伝えるのが礼儀だと思う」(名古屋市立大学、文系)
「サイレントお祈りをやめてほしい。マナーがなってない」(三重大学、文系)
「サイレント→学生側に誠意を求めるとか言ってるポンコツ企業に限ってサイレントしてくる(サイレントするなら学生がセミナーや面接・内定を無断で断っても文句は言わないでほしい)」(明治大学、文系)
「“通過者のみに連絡”は迷惑だし、誠意も感じられないのでやめてほしい」(法政大学、文系)
「サイレントを辞めてほしい。学生には期限を守れと主張する割に、自分らは期限を守らない」(関西大学、文系)
「サイレントはやめて欲しい。何日までに連絡すると言っていたのにしてこないのは非常に失礼だと思った」(神戸市外国語大学、文系)