水産庁取締船が北朝鮮漁船と衝突(第九管区海上保安本部提供写真/ロイター/アフロ)

 産経新聞(2019年10月7日)は、北朝鮮の漁船が水産庁の漁業取締船と衝突、沈没した事件に関して次のように報じている。

「日本海の日本の排他的経済水域(Exclusive Economic Zone)(以下、EEZという)にある大和堆では、2016年秋頃から北朝鮮漁船が大挙侵入して違法操業が深刻化し、海上保安庁と水産庁が取り締まりを強化した」

「北朝鮮側が威嚇や抵抗を激化する恐れもあり政府は警戒していた。今年8月、海保の巡視船が北朝鮮海軍の旗を掲げたボートの乗組員に小銃を向けられた」

「前日には、北朝鮮側が無線で日本側に『領海から即退去せよ』と発信。北朝鮮政府は威嚇に対する日本政府の厳重抗議を受け、『専属経済水域への不法侵犯を自衛的措置で追い払った』などと反論。日本側の主権行使に対抗する姿勢を明確にした可能性もある」

 この記事の中で、筆者は、北朝鮮の主張する「領海」と「専属経済水域」が気になった。恥ずかしながら、北朝鮮の主張する「領海」と「専属経済水域」に関する知識を持ち合わせていなかったのである。

 そこで、北朝鮮の主権主張の内容などを公開情報に基づき取りまとめてみた。

 以下、初めに、EEZについて述べ、次に我が国のEEZにおける係争海域、次に北朝鮮の主権主張、最後に我が国が取るべき対応について述べる。

1.EEZ

 日本は、従来、海洋国家、遠洋漁業国家として領海3海里を主張し、特定経済水域の設定に反対してきた。

 しかし、すでに我が国近海にソ連などの外国の大型漁船が出現して漁具などの被害が続出し、沿岸漁民を保護しなければならない必要性が高まっていた。

 また、国連の海洋法会議において、領海12海里とすること自体に異論を唱える国はほとんどみられず、200海里「漁業水域」を設定する国が相次ぎ、国際社会は新しい海洋秩序に向かって急速な歩調をとりはじめた。

 こうした点をふまえ、従来の方針を転換し1977年7月、我が国も「領海及び接続水域に関する法律」と「漁業水域に関する暫定措置法」を施行し、領海の幅員を12海里とするとともに、200海里「漁業水域」を設定した。