工藤さんに尋ねた球種の増やし方

 ジャイアンツ入団当時、大学時代から決め球のひとつになっていたスライダーを中心に、ストレート、フォークの3種類の球種を持っていたのだが、ここにもうひとつ球種が必要だというイメージがあったわけだ(メジャー以降の僕を知る人は、きっと「(遅い)ストレート」と「フォーク」――スプリットという人もいるが――の2種類で戦ってきたイメージがあるだろう。他にカット系のボールやカーブもときどき投げたが、決め球として使うことはほとんどなかった。スライダーに関してはもはや、どうやって投げていたかも思い出せない)。

 そんな折(僕のプロ入り2年目にあたる2000年)に、工藤さんがジャイアンツに移籍してきた。優勝請負人と言われ、162勝を挙げた19年目(いずれも当時の数字だ)の大先輩であり大投手。

 もっと言うと、小学生時代に憧れた選手だ(なんせこのときで19年目なのだから・・・、そしてこのあと工藤さんはもう11年、現役でプレーすることになる)。

 工藤さんに「球種を増やしたい」と相談をしに行った。すると工藤さんは、はっきりと言った。

「球種を増やすのではなく、いま、持っている球を磨け」

 目から鱗(うろこ)だった。そして、これが僕に合っていたのだ。

 以降も、工藤さんから何か盗めることがないかと、練習での一挙手一投足を追った。工藤さんがブルペンに入る、と聞けば、ブルペンに飛んで行った。工藤さんが投げているマウンドの横で、正座をして股関節や、着地の場所を見続けた。

 質問をすることもたくさんあった。

 例えば、ピッチング時に踏み出す足が、なぜ毎回同じところに着地するのか。工藤さんの足をずっと追っていると、着地がいつもびたっと同じところなのだ。