東京は大都市だから大丈夫だと考えるのは間違っている。豪雨に対して、いかに脆弱であるかを如実に示す資料が公開された。

 5月下旬に、江戸川区が「江戸川区水害ハザードマップ」を発表したが、表紙に「ここにいてはダメです」と書かれており、話題になっている。

 この注意勧告の言葉の後に、「洪水のおそれがないその他の地域へ」という言葉も添えられている。自分の住んでいるところから「逃げろ」と言われて江戸川区民にはショックだったようだが、これくらい強く警告しないと避難が遅れ、命を失う危険性があるのである。

 実は、昨年8月22日に、江東、江戸川、葛飾、足立、墨田の江東5区広域推進協議会が、高潮や河川の氾濫による水害について、「江東5区大規模水害広域避難計画」を、ハザードマップとともに発表している。

 今回の江戸川区のハザードマップは、その内容を踏襲して、江戸川区民向けに編集したものである。

オリンピック期間中に集中豪雨がきたら

 この江東5区は荒川と江戸川という二つの大河川の流域にあり、両者が同時に氾濫した場合、最悪のケースで9割以上、つまり250万人の住む地域が水没し、約100万人が住む江戸川区西部と江東区東部などでは2週間以上浸水が続くという。また、浸水の深さが10メートルに達する地域もあるという。

 都知事のとき、私はこの地区を視察し、都の防災計画を立案したが、江戸川区は、東から旧江戸川、新中川、中川、荒川、旧中川と河川が多く、しかもそれら川の水位よりも低い地域が多く、7割がゼロメートル地帯(満潮時の水面より低い土地)である。川の堤防の上に立って周囲を見渡せばよく分かるが、もし堤防が決壊したら町全体を水が襲う様子が容易に想像できる。

台風12号、西日本豪雨の被災地へ 早めの避難呼び掛け

台風12号の影響による雨が降る東京都内で傘をさす女性(2018年7月28日撮影)。(c)AFP PHOTO / Martin BUREAU〔AFPBB News

 もし、前線を刺激する形で中心気圧930ヘクトパスカル以下の大型台風が直撃すると、荒川流域で3日間の平均雨量の合計が400ミリを超えることになり、その悪夢が現実のものとなる。一つデータを紹介すると、昨年の8月27日に雷雨が東京を襲い、世田谷区で1時間に110ミリの雨が降った。その数字を見ると、3日間で400ミリというのは非現実的な想定ではない。

 怖い仮定だが、来年の夏にそのような豪雨が襲ってきたら、オリンピックどころではなくなる。