大相撲夏場所の千秋楽を安倍首相とともに観戦するトランプ米大統領(写真:AP/アフロ)

(長島 昭久:衆議院議員、会派「未来日本」代表)

 私は、これまでの「安倍外交」が、官邸主導で戦略的に展開されてきたことを評価しています。そうであるからこそ、最近の安倍外交にはいくつか注文を付けたくなる衝動を抑えきれません。

 特にここ半年ほどの安倍外交の変調は誰の目にも明らかではないでしょうか。ひと言で言うなら、その場しのぎの昔ながらの自民党外交に戻ってしまったように感じられます。もちろん、外部の我々が知り得ない情報は膨大で、外交交渉には秘密がつきものです。表で交わされているやり取りだけを見て批判してもたいていは的外れになることを承知の上で、これが単なる杞憂に終わることを祈りつつ、以下いくつか指摘させていただきたいと思います。

「最大限の圧力」から「前提条件なしの会談」へ

 第一は、対北朝鮮外交です。

 周知のとおり、昨年の元旦、北朝鮮の金正恩委員長が「平昌オリンピックに選手団を派遣する用意がある」とのメッセージを発した途端、まずオリンピック主催国の韓国がこれに飛びつき、なんとアメリカが続き、中露が後押しして国際社会と北朝鮮との間に一気に雪解けムードが広がりました。そこから、北朝鮮選手団の平昌オリンピック参加(2月)、南北首脳会談(4月、5月)、そして中朝首脳会談(3月、5月)へと北朝鮮による「微笑外交」攻勢が展開され、ついに6月にはシンガポールで史上初の米朝首脳会談が開かれたのです。

 そのような展開の中で、一昨年まで北朝鮮に対し「国連制裁決議に基づいて最大限の圧力を」と、徹底制裁を訴えてきた安倍政権は、アメリカが北朝鮮の対話路線に応じ始める中で、次第にトーンを変えていきました。世界中で首脳会談や外相会談が開かれるたびに、最大限の圧力を説いて回っていた安倍総理や河野外相でしたが、別人とも思えるほどの豹変ぶりを見せたのです。