日本企業は目先の利益を追わず長期的な視点で経営を行い、米国企業はコストカットなど短期的な利益しか追求しないといったイメージがあった。だが日本企業が長期的で米国企業が短期的という話は今や完全に逆転している。日本企業の視点は極めて短期的になっており、こうした経営が長続きするはずがないのは明白である。日本の劣勢がはっきりした今こそ、かつの日本人がそうだったように、もっと謙虚になり、諸外国から学ぶべきだ。(加谷 珪一:経済評論家)

売上高が伸びていないのに、社員数は増えている

 過去10年、日本企業全体の売上高はほとんど伸びていない。この話は日本のGDP(国内総生産)がほぼ横ばいで推移してきたことと符合している。同じ期間で諸外国の企業は業績を拡大しており、それに伴ってGDPも大きく伸びた。日本だけが世界から取り残されていることは、すでに多くの人が気付いていることだろう。

 売上高は拡大していないのだが、日本企業の利益率は同じ期間で大きく上昇した。

 2018年3月期における売上高に対する当期利益率は4.0%だったが、10年前の2008年3月期は1.6%しかなく2倍以上に利益が拡大している。本来、企業は売上高と利益が共に伸びていくというのが健全な姿だが、売上高が伸び悩んでいるにもかかわらず利益が増えているということは、コストカットを進めたからに他ならない。

 同じ期間で日本企業は仕入れの原価を3.5ポイント下げている。下請けなどへの値引き要求を厳しくしたり、品質を下げた原材料を調達することでコストを削減した可能性が高い。

 日本企業は人件費を大幅に減らすことで利益を捻出しているとの批判があるが、必ずしもそうとは言い切れない。過去10年間で日本企業は売上高が伸びていないにもかかわらず、従業員の総数を3%も増やしている。その間、従業員の平均年収は変わっていないので、総人件費はその分だけ増加した。1人あたりの年収は上がっていないが、人件費全体で見れば、コストカットどころかむしろ増やしているというのが実態だ。