♪さらば地球よ 旅立つ船は 宇宙戦艦 ヤマト
宇宙のかなた イスカンダルへ 運命背負い いま飛び立つ♪
「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌の冒頭である。
地球を救うためにガミラス帝国の重囲をくぐって、宇宙戦艦ヤマトで地球からはるか離れた宇宙にあるイスカンダル星へ救援依頼に行く勇壮な物語として大ヒットした。
インドの軍神「スカンダ」はアラビア語やペルシャ語の「イスカンダル」に由来し、ギリシャなまりがアレクサンドロス大王とされる。
他方、インドネシアやマレーシアなどのイスラム社会では地方のスルタンの称号としてイスカンダルが使われており、権威(者)、保護者、あるいは征服王の意もあるようだ。
ともあれ、イスカンダルとはアレクサンドロス大王の謂いでもあったのだ。
不思議に思えるが、キリストはセルビアではハリストスと呼ばれ、女優の(オードリー・)ヘップバーン(Hepburn)は発音重視でヘボン(ヘボン式ローマ字など)となる類推で理解できよう。
イスカンダルの国、バルカン諸国
このイスカンダルの里を筆者は昨年から今年にかけて訪ねた。
より正確にはアレクサンドロスを生んだマケドニアをはじめ、サラエボやコソボなど旧ユーゴスラビアの5か国とアルバニアの6か国である。
ボスニア・ヘルツェゴビナ(以下、ボスニアとも略称)とコソボ共和国以外は民族名を国名としているが、その民族だけで構成されているわけではない。
例えば、マケドニア共和国はマケドニア人が多数(65%)であるが、アルバニア人(21%)やトルコ人(5%)などもいて、宗教もマケドニア正教やイスラム教などである。
他も同様に民族と宗教が混在し、人種のるつぼと称されるゆえんである。スラブ人が南下して山また山の谷あいに民族の地域社会を作り、それぞれが国家を形成していったからである。
ボスニアは民族構成がイスラム教徒(ムスリム)約44%、セルビア人約31%、クロアチア人17%のように拮抗している。
またコソボ共和国はアルバニア系祖先(イリュリア人)の伝来地でアルバニア人が90%であるが、中世以降はセルビア王国の中心地となりセルビア正教発生の聖地とされていることから、ここも民族名の国家とはなっていない。