中国、改革開放40年 民主化なき経済成長に暗雲も

中国・北京の人民大会堂で開かれた改革開放40周年を祝う式典に出席する習近平国家主席(2018年12月18日撮影)。(c)WANG Zhao / AFP〔AFPBB News

 中国では毛沢東の大躍進政策の失敗で3600万人が餓死(出生率低下で生まれなかった4000万を含め、7600万人と断罪)する「人類史上最悪の悲劇」が起き、「すでに半世紀以上が経つというのに、国内には本が一冊もない」。

 これは、記者生命を懸けて楊継縄が2008年に香港で刊行した『墓碑』(日本語版『毛沢東 大躍進秘録』)にある言葉で、出版時点で同書の中国本土での発行、持ち込みは禁止されていた。

 元新華社通信高級記者(局長級)の600ページの大著から感じ取ることは、30万人の市民を日本軍が虐殺したとして国家を挙げて日本糾弾に奔走する「南京大虐殺」の報道と全く裏返しの好一対ということである。

 共産党が国家ぐるみで“ありもしなかった”「南京大虐殺」を演出してきた、そして今も演出し続けているのではないかと。

 そして、著者が言うように、言論の自由が封殺され、指導者が決めたことを称揚する以外は一切許されない極権制度(筆者注:一党独裁)がもたらすのではないだろうか。

 劉少奇(毛失脚時の主席)が毛沢東に向かい「これほど多くの餓死者を出し、歴史はきっとあなたと私のことを書くだろう。人が人を食べたことは必ず歴史に残るだろう!」と言ったという。

 しかし、慰霊碑は心に建てることしか許されないし、ほとんどの国民は大悲劇を知らないため、教訓を汲み取ることさえできないというのである。

歪曲された中国100年の近現代史

 国家ぐるみの行為のすさまじさ、自国民だけでなく、外国人も完全に騙せるということが如実に分かる。

 たまに、党機関紙が習近平主席を批判したなどの記事が出るが、これは当局が「主席(あるいは自国)を批判することは自由ですよ」と思わせる油断を誘う一手なのだ。

 国家が許す範囲内での“自由”でしかないし、本当の意味での「言論の自由」などではない。

 主席や自国を批判する勇気がある人物が書いた本だから、信用できると思わせる。そしてその中で、「一寸した嘘」を紛れ込ませると、読者は当然ながら、その「嘘」を信じてしまう。

 記者は幼少時から徹底した洗脳下で育てられる。共産政権が強権力で「共産党のやることには間違いがない」として、一寸でも反論しようものなら、反動分子として運命が定まってしまうから、親たちも反動分子が出ないように育てなければならなかったという。