富嶽は大日本帝国の妄想に終わる

 B-29が2200馬力のエンジンを4基搭載し、航続距離約9000キロ、最高時速は600キロ弱、最大爆弾搭載量9トン、全長は30メートル、全幅が43メートル。

 対する、富嶽は5000馬力のエンジンを6基搭載し、航続距離約2万キロ、最高時速780キロ、最大爆弾搭載量20トン、全長は43メートル、全幅が63メートル。

 確かに、富嶽が実現すれば、B-29を圧倒する爆撃機になる。しかし、想定数字をあげつらったところで、B-29に対抗する航空戦力も整えられない大日本帝国が実際に作れるわけがなかった。

 例えば、5000馬力のエンジンは絶望的であった。

 日本も2000馬力級の「誉」というエンジンを完成させ、戦争末期に実践投入まで持ち込んでいる。「疾風」や「紫電改」といった戦争末期に完成した新型戦闘機に搭載している。

 小型軽量で大馬力の誉は、確かにカタログ数値では非常に優秀なエンジンだった。

 しかし、日本の工業力では安定して量産することができなかった。また、故障多発を克服できなかった。日本の新型戦闘機は、襲いかかる米軍機に対抗できる数が揃うことはなかった。

 一方、米国は2000馬力級のエンジンの大量生産に成功したうえ、トラブルも実戦に耐えるほどに抑え込むことができている。

 2000馬力級のエンジンを積んだグラマン「F6F」戦闘機は「ゼロ戦」をバタバタ撃墜したし、そんなエンジンを4基積んだB-29の大編隊も実現してしまった。

 その米国でも5000馬力のエンジンを実現できていない。