湯浅醤油がフランスでつくる醤油の原材料。麹菌以外、現地調達した。「ゲランドの塩」とフランス産軟水のミネラルウォーターが見えている

 欧州ミシュランシェフたちに“世界一”と絶賛される日本の醤油職人を、以前、本コラムでご紹介した。醤油発祥の地・和歌山県有田郡湯浅町(人口約1万1500人)で1881年に創業した調味料製造会社「丸新本家」の5代目当主・新古敏朗氏(49)だ。

 同氏は、醤油の新たな可能性を追求するために、2002年に丸新本家から醤油部門を分離独立させて戦略子会社「湯浅醤油」を設立。ここを舞台に醤油づくりのイノベーションをなしとげ、『生一本黒豆』『魯山人』をはじめとする逸品を創出して、欧州ミシュランシェフたちがわざわざ湯浅町まで買い付けにくるようになったのである(下記2本の記事参照)。

・「欧州のミシュランシェフが大量買いする醤油」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52233
・「『猛反対』の中で生まれた醤油発祥の地のヒット醤油」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52351

 これらの記事掲載から約1年、新古氏はフランスやベトナムなどで醤油の現地生産を始めていた。特にフランスでは、すでに高級品としてのブランディングも始まり、初出荷が2020年春で価格や販売数量も未定だというのに、早くもEU各国のミシュランシェフや日本国内から予約の打診が殺到しているという。今回はその姿をご紹介したい。

欧州ミシュランシェフ絶賛の醤油をフランスで現地生産へ

「フランスには醤油を輸出していたのですが、東日本大震災に伴う福島第一原発の放射能問題で日本製品の輸出ができなくなって以降、中断してしまいました。

 その後、2014年にフランスのボルドーを訪れた際、ワインの生産者たちと交流する機会があったのですが、通訳を務めてくれた現地の日本人ワイン醸造家(内田修氏)と一緒に過ごす中で、“ここで醤油をつくるのもアリだな”と思ったのです」と新古氏はいう。

新古さん(左)と、内田修さん