「中長期の日本の潜在的軍事脅威に備える」
その事実を、私自身がワシントン駐在の記者として書いてきた産経新聞の記事を通して紹介しよう。
まずは今から25年前、産経新聞の1994年12月5日の朝刊国際面に載った記事である。《韓国軍の空・海強化計画 「日本脅威」傾き過ぎ 米共和党 次期議会で調査開始》という見出しが付けられていた。
《【ワシントン4日=古森義久】米議会の共和党は、韓国軍の軍事能力強化の計画が日本を潜在的脅威と見立てた空、海軍の増強に傾きすぎている─として1月の次期議会で公聴会などを開き、本格的な調査を開始することになった。米議会側では、「韓国は在韓米軍と共同で北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の脅威に備えるため、地上防衛軍の強化に最重点を置くべきだ」と主張しており、ウィリアム・ペリー国防長官も韓国が日本を仮想敵として中長期の防衛計画を立てている実態を認め、韓国側に抗議したことまで明らかにしている。
共和党筋が3日までに明らかにしたところによると、議会共和党は上院外交委員会などを中心に第104議会で、韓国軍の兵器調達計画などの調査を開始する方針を決めた。特に在韓米軍の任務に関連して、韓国の中長期の軍事計画が日本を潜在的脅威とみての増強に比重を置きすぎているとの認識に立ち、米国の防衛予算の使途という見地から下院予算委員会なども加わって公聴会を開くことも予定しているという。
米議会では、韓国軍の軍事計画の現状を「米韓共同防衛態勢のゆがみ」ととらえ、下院が今年(1994年)6月、「米韓共同防衛では北朝鮮の現実の脅威に対し、原則として韓国軍が地上防衛、米軍が空、海の防衛と責任分担が決まっている。だが、韓国軍は地上防衛能力になお欠陥があるにもかかわらず、その改善計画では費用の顕著な部分を地上防衛以外の分野に向けている」と指摘。その是正を目指すために、米国防総省に調査と報告を求める決議案を可決した。
この決議は「他の分野」として、(1)潜水艦(2)駆逐艦(3)高性能の航空機─をあげ、「これらの兵器は地上軍事能力の改善に役立たず、その分、米軍への負担が増す」としている。
この決議には、韓国がなぜ北朝鮮からの攻撃への対処に直接、有用ではない潜水艦などの増強に力をそそぐのかは明記されなかったが、その理由が主として中長期の日本の潜在的軍事脅威に備えるため─とされることは、米側の議会筋や朝鮮問題専門家が明らかにしている。
事実、今年5月にペリー国防長官がワシントンで朝鮮半島の安全保障について演説した際、議会調査局のアジア安保問題の専門家ラリー・ニクシュ氏から「議会では最近、韓国軍が日本からの仮想脅威に対処するため、空、海の軍事能力強化を優先させていることに批判がある。韓国側にその是正を要請したか」という質問が出た。
これに対し同長官は「確かにここ数年、国防総省も韓国軍のそうした(日本を仮想脅威としての)目的の兵器システム開発計画の不適切な優先順位に懸念を抱いている」と述べた。さらに同長官は、4月の韓国訪問では韓国側にその現状を抗議し、是正を正式に求めたことを明らかにした。
共和党議員には、米韓軍による「北朝鮮からの総攻撃に対しては北の中枢への通常戦力での大量報復」という抑止戦略が実効を失いつつあるとの認識がある。》