12月9日、CNNが注目すべきスクープを報じた。
サウジアラビア人のジャーナリストであるジャマル・カショギ氏が、10月2日に在イスタンブールのサウジ総領事館内で殺害された事件では、総領事館内での殺害時の様子がトルコ当局によって密かに録音されていた。その音声データの「書き写し」を読んだ「関係者」が、音声の詳細な内容を明かしたというのだ。
これは事件発覚後の早い段階から、トルコ当局が保有していると報じられていた音声データのことだ。この事件では、この音声データの内容が非公式なリークのかたちで散発的にトルコのメディアなどに流され、それでサウジ当局による殺害が判明してきたという経緯がある。
当初は関与を否定していたサウジ側が、10月20日にトルコのエルドアン大統領とサウジのサルマン国王の電話会談の直後に関与を認めたことからみても、トルコ当局からかなり決定的な証拠が提示されたことは確実だ。それがこの音声データの内容だったものと思われる。
この音声データについて、トルコ当局は長く公式にはその存在を公表していなかった。どこの国でも、自国の諜報活動を公式に認めるということはほとんどしない。しかし、これだけ世界の注目を集めたこともあり、11月10日にようやくエルドアン大統領はその存在を公式に認め、サウジアラビア、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツに、その情報を提供したことを明かした。今回、CNNはその内容を間接的に取材したというわけである。
「息ができない」、叫び声、死体を切る音
では、その音声データはどんな内容だったのか?
その記録は、カショギ氏が総領事館内に入館してすぐから始まっている。彼はある男の姿を見て、驚いて尋ねている。
「あなたはここで何をしているのか?」
男はカショギ氏の顔見知りの元在ロンドン・サウジ大使館員のマーヘル・ムトレブで、彼は「あなたは戻る(サウジに帰国する)」とカショギ氏に言った。ムトレブは今回の事件の現場リーダーである。
ちなみに、11月15日にサウジ検察庁が公式に発表した事件の概要には、以下のようにある。