トルコ当局、15日夕方にもサウジ領事館を捜索か 記者失踪で

トルコ・イスタンブールにあるサウジアラビア領事館(2018年10月7日撮影、資料写真)。(c)AFP/Yasin AKGUL〔AFPBB News

 世界を震撼させたサウジアラビア記者の暗殺事件。殺害方法はあまりにも残虐でおぞましいものだったと伝えられている。暗殺者たちは一体何者なのか。サウジアラビアの若き権力者、ムハンマド皇太子との関係は? 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏がレポートする。(JBpress)

医師が暗殺チームに加わったルートは?

 サウジアラビアのジャーナリストであるジャマル・カショギ氏が、10月2日にトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館内で殺害された疑惑で、20日、サウジ政府がついに殺害の事実を認めた。口論から殴り合いになり、その挙句に殺害してしまったというのだ。あまりに都合のいい発表で、おそらく虚偽に違いない。トルコ当局が入手しているとされる音声データでは、カショギ氏は明らかに最初から「殺害」目的で扱われていたことが、トルコ・メディアの報道からは伺える。

 また、サウジ政府は同時に、犯行に関与した18人を逮捕したこと、さらに5人の高官を解任したことも発表した。

 その中には、ムハンマド皇太子の顧問のサウード・アル・カフタニや、情報機関「総合情報庁」(GIP)のアハマド・アシリ副長官もいた。サウジ政府はこの事件を、GIPが勝手に暴走した結果のアクシデントとして決着を図ることにしたわけだ。なお、同時に政府の情報部門の改革を行う委員会が作られ、ムハンマド皇太子が責任者に任命されたという。つまり、ムハンマド皇太子の責任は一切問わないことになったわけである。

 ただし、この説明にも無理がある。まず、実行グループのメンバーをみると、GIPが主導したというにはあまりに不自然なのだ。

 今回、サウジ政府の発表では関係者は18人とのことだが、そのうち15人が、殺害当日にサウジからイスタンブールに入っており、顔写真や氏名が判明している。それらの情報から、うち14人の素性が少しずつ判明してきている。以下の表の12人と、ハリド・アイエド・アル・タイビ(王室警備隊員)とムスタファ・ムハンマド・アル・マダニ(情報機関要員)である。


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 残る1人、トルキ・ムサレフ・アル・セフリに関しては詳細不明。

 以上のうち、リーダー格の人物は、ムハンマド皇太子の外遊時の警備を担当しているムトレブとみられる。彼の現在の正確な所属・立場は不明だが、皇太子の警備は王室警護専門の「王室警備隊」という独立した組織の中の、皇太子の護衛専門のチームが担当することから、そちらに所属している可能性がある。

 また、現在は情報機関の所属だとの未確認情報もあるが、そうなると、海外を担当する総合情報庁(GIP)の可能性もないわけではない。ただ、もともとは内務省幹部だったとの情報もあり、現在も内務省の所属である可能性もある。過去に在外公館勤務の経歴が確認されているので、いずれにせよ国外での活動に慣れており、諜報・公安活動などの非公然活動にも通じているものと思われる。

 トゥバイジー医師は、トルコメディアが報じるところによれば、カショギ殺害で実際に手を下し、しかも死体をバラバラに切断する役割を負っていたが、その際、周囲に上位者として振る舞っていた形跡がある。彼はムハンマド皇太子の側近という情報はなく、どういったルートからこのチームに加わったのかは不明だが、内務省ルートの可能性が高いのではないだろうか。