勢いのある国とそうでない国との差とは、どの分野でも、こういうものなのか。日本では、プロ野球の球団経営が重荷だと親会社の撤退話が後を絶たないが、お隣の国、韓国では新規参入を求める企業が「行列を作っている」(韓国プロ野球委員会=KBO)という。
韓国の“楽天”がついに球団を創設
そんな中で、財閥がほとんどだった韓国のプロ野球界に、初のIT企業の新規参入が決まった。
KBOは2011年2月の理事会で、9番目の球団としてインターネットゲームソフト会社である「NCソフト」を事実上選定した。4月のプロ野球開幕日までに球団創設手続きを終え、2年間は2軍リーグに参加。2014年にも1軍リーグに加入する。
NCソフトは、韓国を代表するITベンチャー企業だ。創業は1997年だが、日本でも有名なオンラインゲームソフト「リネージュ」や「タワーオブアイオン」などの立て続けの大ヒットで一気に韓国のIT企業の代表銘柄になった。
2010年の売上高は6497億ウォン(1円=約13ウォン)、営業利益は2429億ウォンという超優良企業だ。もちろん上場企業で時価総額は5兆ウォン前後に達する大企業でもある。
韓国のプロ野球界は、1982年に6球団でスタート、1991年に8球団になった。NCソフトの加盟で20年ぶりに球団数が増えることになる。
韓国球界の悲願、2リーグ10球団体制へ
KBOは韓国メディアに「年内にはもう1球団加盟する」との見通しを明らかにしている。実現すれば、2014年からは韓国球界の念願だった「2リーグ10球団体制」がスタートする可能性もある。
韓国で、プロ野球球団を経営する親会社は、これまでほとんどが財閥だった。今も、サムスン、現代自動車(球団名は起亜)、LG、SK、ロッテ、ハンファ、斗山という韓国を代表する財閥が球団を保有している。
そういう意味では、ITベンチャー企業の加盟は画期的な出来事と言える。
ITベンチャー企業にはカリスマ経営者がいる。NCソフトの創業者で、関係者と合わせて25%の株を握る事実上のオーナーでもある金沢辰(キム・テクジン)社長がそうだ。