今年(2011)1月4日、パキスタン、パンジャーブ州のサルマン・タシール知事が、首都イスラマバードで、大衆の目前、車から降りたところを自らの護衛警官に撃たれ死亡した。

またしてもパンジャーブ州で暗殺事件

「冒涜罪」批判した州知事、警護官に射殺される パキスタン

護衛警官に撃たれ救急車で運ばれるサルマン・タシール知事〔AFPBB News

 アシフ・アリ・ザルダリ大統領にも近い存在である知事は、イスラム穏健派として知られている。

 キリスト教徒が犯したイスラム冒涜罪に対し寛容な態度を示していたことから、憤慨したイスラム急進派が犯行に及んだものだった。

 暗殺犯はすぐさま拘束されたが、彼を英雄視する向きもあり、その釈放を求めデモに走る事態も招いている。

 ザルダリ大統領夫人だったベーナズィール・ブットー元首相が、2007年、イスラム原理主義者に暗殺されたのもこのパンジャーブ地方。

「冒涜罪」批判した州知事、警護官に射殺される パキスタン

暗殺されたタシール知事AFPBB News

 そして、強権かつ親米姿勢で批判を浴び続けていたパルヴェーズ・ムシャラフ前大統領もこの地でたびたび暗殺未遂に遭遇している。

 タリバンが実効支配するトライバルエリアも近く、軍司令部や情報機関もあるため、9.11同時多発テロ以降、自爆事件などテロ行為は増え続け、治安は悪化の一途である。

 「パンジャーブ」と言われてもいま一つピンとこないかもしれないが、もともと「5つの川」を意味し、インダス川とその支流が潤す豊かな穀倉地帯のこと。

 今では、パキスタンとインドをまたぐ地域となっている。昨年の洪水ではともに大被害をこうむったことは記憶に新しい。

 世界四大文明の1つ、インダス文明発祥の地だから、学校の世界史で真っ先に習う誰もが知っているはずの地でもある。