将来に対する見通しが重要

 こうした状況を根本的に打開するためには、長期的な視点に立った対策が不可欠である。消費が継続的に拡大するという楽観的な見通しを、消費者も事業者も共に持てる環境を構築するのがもっとも重要だ。

 消費者は、現在の所得水準だけで消費を決めているわけではなく、将来予測との兼ね合いで最終的な支出を決定する。将来に対する不安要素が少なければ、今、所得が少なくても消費を増やす可能性が高い。

 将来の不安要因を取り除くためには、年金や医療といった社会保障制度改革を避けて通ることはできないだろう。

 若年層の中には、将来、年金はゼロになるという極端な感覚を持つ人も少なくない。年金財政の状況が悪いのは事実だが、年金がゼロになってしまうわけではない。「日本の公的年金は絶対大丈夫」といった情緒的な話では、若年層を説得するのは難しい。悪い情報も含めて、もっと積極的に情報公開する必要があるだろう。

 将来に対する不安要因が減れば、消費が増え、企業はこれを見越して積極的な投資を行うことになる。

 短期的には、現在、政府が進めている外国人労働者の受け入れ拡大は、それなりに効果を発揮する可能性が高い。外国人労働者が増えれば、所得の絶対値が増えるので消費の総量も増え、結果的に設備投資の増加につながる。供給制限による生産の低下についても心配せずに済むだろう。

 だが問題なのは、政府がこの政策について、事実上の移民政策であるとはっきり打ち出していない点である。

 外国人労働者を多数受け入れる以上、望むと望まざるとに関わらず、その一部は移民化する。移民は存在しないという建前のまま、こうした政策を進めるのは実害があまりにも大きい。結果的に必要な受け入れを実施できないという状況に陥っては本末転倒である。

 短期的には外国人労働者の受け入れ拡大で供給力を維持するとともに、その間に、社会保障製の改革について明確な道筋を示すことが、もっとも効果的な人手不足対策ということになる。