アエロフロート航空が専用ターミナルとして使用しているターミナルDは、すでに人であふれていました。表示板を見ると、すべての出発便が遅延ないしはキャンセルとなっています。

 受付カウンターに行き、搭乗手続きを終えたところから悲劇が始まりました。それから、29日早朝3時まで、東京行きのフライトは遅延に遅延を重ね、結局58時間も空港内に閉じ込められました。

来る日も来る日も「今日は飛ぶ」と言われて・・・

3日間の遅延の後、東京行きフライトのアナウンスで搭乗口に集まった日本人乗客。アエロフロートは、26日、27日の便はキャンセルしていて、搭乗手続きに現れた職員にはキャンセル便の搭乗者名簿もなく、誰が搭乗できるのか、という情報も持っていなかった。私的に休暇帰国をする日本大使館員を中心として組織した現地対策本部(乗客のボランティア組織)で、機内の席数と乗客数を独自に確認し、航空会社職員を指導した。全員を機内に送り込んだあと、最後に搭乗された在モスクワ大使館今村公使には、全員から思わず拍手がわいた。

 この間、全く遅延理由の説明もなければ、いつ東京行きが出発するかという情報もなし。

 空港自体は閉鎖していないため、27日の便、28日の便で東京に向かう乗客はどんどん増えてきて、29日の搭乗直前には100人を超えていました。 

 年末の私的一時帰国で同じ便を予約されていた在モスクワ大使館の今村朗公使と2人の大使館員の方々が、状況を見るに見かねて、大使館経由でアエロフロート航空と接触を始めてくださったのが27日夕刻でした。

 そこから29日の搭乗手続きまで、大使館の方々と我々は現地対策本部を立ち上げ、空港内のレストランの一角に陣取りアエロフロートと数々の交渉を行いました。

 その効果があったのか、アエロフロートの副社長情報として、東京行きは夜10時発、という情報が27日も28日ももたらされました。

 しかし、結局は東京行きが出発することはありませんでした。現地対策本部の効果は残念な結果に終わってしまったと言わざるを得ませんでした。

 ただ、この遅延の中で、異常な状況におけるロシア人の行動をしっかり観察することができたのは、ある意味で大変勉強になりました。その結果をいくつか披露しましょう。

(1)ロシア人の時間に対する感覚は、どうやら日本人とは違うようで、彼らは待つこと、それも当てもなく待つ、ということがそれほど苦痛を伴わずにできる。

(2)アエロフロートは、食券バウチャーというのを1人当たり何回か発給してくれたのですが、それを持ってターミナル内のレストランに行ってもすでに食材は底を突き、飲みもの以外ありません。

 しかし、ロシア人は文句を言うこともなく、仲間でビールやウオッカを飲みながら楽しそうに語らっています。 空腹に強い人種です。

(3)アエロフロート職員は、警備員を伴いゲートに現れて客を威嚇する。いくらフレンドリーなメッセージを流していても、ロシア企業のサービスに対する根本の姿は変わっていないことを知らされました。