昨年12月、東北新幹線が全線開通した。3月には九州新幹線も博多・新八代間が完成予定で、着工から半世紀の時を経て、青森から鹿児島まで一本の大動脈が出来上がることになる。
新幹線建設にからむ利権と汚職
新たなる経済効果に期待する向きも多いが、さらなる路線の延長やリニア敷設には、技術面ばかりでなく利権の調節や収益性の確保といった乗り越えるべき課題も少なくない。
東海道新幹線開業直後、十数年後に開業予定の山陽新幹線敷設予定地の利権を巡る汚職につけこみ、大金をかすめ取ろうとする『黒の超特急』(1964)で田宮二郎が演じたチンピラのような者たちの欲望を調節することが、どんなご時世でも必要になってくるからである。
そこに映し出される当時の日本の様子を見ていると、よくぞ50年余りでここまでやってきたものだ、と日本という国の驚異の経済成長ぶりが実感できる。
しかし、その道程は決して平坦なものではなかったことは言うまでもない。
人生はよく旅に例えられるが、その集合体たる国家や企業の歩みも同じである。山あり谷あり、そして、横道にそれることも、時には後ずさりすることもある。
ポセイドンの怒りを買い放浪を強いられたオデュッセウス
そんな紆余曲折の道程を表す英語としては、「Odyssey」がしっくりくるかもしれない。もちろん、それは紀元前(B.C.)8世紀、ホメロスによって書かれた叙事詩「オデュッセイア」が英語化した言葉で、苦難を伴う冒険行のごとき旅路を指すものだ。
「オデュッセイア」は、トロイア戦争を終えた知将オデュッセウスが、故郷ギリシャに戻ろうともがき続ける物語。オデュッセウスのラテン語表記が英語化すると「ユリシーズ」となる。
この長編叙事詩が2時間弱とコンパクトにまとめられた映画『ユリシーズ』(1954)を見れば、気楽にそのエッセンスを吸収できるので重宝する。
オデュッセウスは、海神ポセイドンの怒りを買ったばかりに放浪を強いられることになるのだが、逆に、度重なる危機を女神の女王ヘラに助けられるのが、ストップモーションアニメの傑作『アルゴ探検隊の大冒険』(1963)の主人公イアソンである。