1月11日、中国が開発中のステルス戦闘機「J-20」が、ゲーツ国防長官の訪中に合わせたとしか考えられないタイミングで試験飛行を行い、広く注目を集めた。

 「J-20」が実戦配備されるようになるまで、まだ5~10年くらいかかるだろうというのが常識的な見方である。J-20の評価よりもむしろ関心を呼んだのは、この試験飛行が行われたことを、胡錦濤主席をはじめとする文官の中国指導者が知らなかったと報道されたことだ。

 ゲーツ国防長官との会談で、胡錦濤主席は「J-20」の試験飛行がゲーツ国防長官の訪中とは無関係であることを強調し、「予定通り行われたにすぎない」と、その場を繕った。

 しかし、その弁解には無理がある。最新鋭兵器の開発など、どこの国でもトップシークレットのはずだ。それにもかかわらず人民解放軍はこれみよがしに「J-20」の試験飛行を「公開」し、自由に報道させた。ゲーツ訪中を意識して実施された人民解放軍のデモンストレーションであったことは言うまでもない。

 また、中央軍事委員会主席である胡錦濤の了解も取らず、人民解放軍がこうした行動に出たとすれば、これは極端な表現で言えば「謀反」に匹敵する。

 「面子」をことのほか重んじる中国で、胡錦濤主席の面子を潰す挙に出た人民解放軍の行動は、胡錦濤政権がすでにレームダック化していることを内外に示すとともに、中国共産党の絶対的指導下にあるはずの人民解放軍が「自分勝手に」行動していることを示唆している。

 人民解放軍は明らかに、米国との軍事交流再開に反対なのだ。

人民解放軍はなぜ「J20」の試験飛行を米国に見せつけたのか

 ゲーツ国防長官の訪中の目的は、2010年1月から途絶えていた米中軍事交流の再開であり、報道ではその方向で話がまとまったとされる。

 しかし、人民解放軍にとってそれが不満なことは明らかだ。

 米中軍事交流を再開させるなら、中断の原因となった米国の台湾向け兵器供与につき、それを「凍結」するなどの言質を米国から取り付けるのが「最低条件」のはずだ。それさえしないまま、軍事交流を再開すると言われても納得できるはずもない。