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(文:足立 真穂)

 1948年の独立以来、イスラエルの特殊部隊が関わった作戦の数々を時系列で微細に入り伝えるノンフィクション。空港での人質奪還、中東戦争、エルサレム包囲戦、レバノン戦争、「テロリスト」の暗殺、原子炉空爆、ハマスとの闘い・・・その背景を知ることで、イスラエルの歴史や芯のようなものまでが見えてくる。

 原題はNo Mission is Impossible. 『ミッション・インポッシブル』の、映画も真っ青な内容が続くのであながち嘘ではない。なにしろ著者は、世界最強と言われるイスラエルの対外情報機関「モサド」について書いたベストセラーノンフィクション『モサド・ファイル』のマイケル・バー=ゾウハーとニシム・ミシャルのコンビだ。

 マイケル・バー=ゾウハー自身がスパイ小説の巨匠で、そもそもの経歴がすごい。1938年にブルガリアに生まれ、建国の年にイスラエルに移住し、大学を卒業後中東戦争に従軍。大学で教鞭をとりながら国会議員や国防相の顧問を務めた。首相やモサド長官の伝記をまとめると同時に、ベストセラー小説やノンフィクションをがしがしと執筆中・・・と、こういう本を書くべくして書いている人なのである。タッグを組んだ共著者のニシム・ミシャルは、テレビ界の第一人者でジャーナリストだというから、うまく役割分担ができたのだろう。

個別の戦闘について当事者が証言

 サブタイトルにあるように、建国以来イスラエルが経験してきた、歴史を変えるような戦闘を、特殊部隊が作戦を実行する視点で書いている。マイケル・バー=ゾウハー自身も途中から登場するが、現場経験がものを言っている。

 少人数で行うこともあり、また、空挺部隊のユニット101、サエレトマトカル、シャエテット13、キングフィッシャー、デュブデバン、シムション、マグラン・・・といった特殊部隊やコマンド部隊が機能的に作戦をこなす様は、映画以上に映画らしい。こんなこと本当にあるのか、の連続だ。