アメリカと日本では、言語や文化、それに企業文化、報酬や人事といった制度などがもちろん異なっている。英語という言語の特性が、結論を先にし、自分の意志や相手にどうしてほしいか明確にすることの背景になっていることもあるだろう。コミュニケーションにおいて、言わなくても通じると思う日本、言葉で明確に示さなければ伝わらないと思っているアメリカ、という違いもある。
また、外資系では時間でなく成果によって報酬が決まるため、時間とアウトプットに対する一人ひとりの意識が高くなる点も見逃せない。外資系の外国人エグゼクティブクラスは、非常に高い報酬を得ており、だからこそ、彼らは自らの時給を計算して把握し、その時給に見合ったパフォーマンスをしようと心がけているという。
伊藤氏によると、彼らは1日、あるいは1週間の業務について、どんな業務に何%の時間を割いているか、自ら数値化してとらえる習慣を持っている。この考え方は、マネジメントにも生きていて、例えば、部下が忙しくて頼んでいた資料の作成が期限に間に合わなかったというような事態にも、「1日の仕事のうち、何にどれだけ時間をかけているか?」と尋ね、そこから改善点を導き出す。メール返信や電話対応といった日々の雑務に追われて、やりたいことに集中することができなくなってしまわないためには、こうした意識づけも必要なのだ。
こうした文化や制度上の違い、そこから生まれる意識の差を踏まえたうえで、日本ではどうすればいいかを考えたい。
伊藤氏は「今の日本のままではよくないと言って、アメリカのやり方をそっくり日本に持ってくることは難しい」と指摘する。このことは、会議の効率化にとどまらない、働き方改革全般において言えるだろう。うまくいっているやり方をそのまま無批判に取り入れるのではなく、自分たちにとっての良いやり方を一つひとつ考える手間を惜しんではいけないのではないか。
「世界企業となったアップルだって、多くをソニーに学んだと、故スティーブ・ジョブズ氏も語っていた」と伊藤氏は話す。日本の良さも認識したうえで、「アメリカや他の国の企業のベストプラクティスを学び、日本にローカライズする。自分たちの会社に合うと思うところを取り入れ、自分たち流に落とし込む。そうすることで、成長の可能性があるのでは」と助言している。