2月に20世紀末からの新習俗「恵方巻」商法を検討し、反響がありました。そこで3月は「ひな祭り」の起源を、常識の源流に遡って考えてみたいと思います。
3月3日のひな祭りは桃の節句とも呼ばれますが、ここにまず第1の問題があります。
地方によって差はあるものの、概して桃の花は3月中旬から4月にかけて開花し、ひな祭りの3月3日あたりには日本列島の大半で、いまだ桃の花は咲いていません。
季節商品として売られる菱餅や白酒に、飾りとしてプラスチック製の桃の枝がついていることがありますが、伝統行事として考えるなら当然ながら不自然です。
まあこれは致し方のない話で、旧暦の伝統行事を日付だけ新暦にシフトしているので、お正月を振り出しに、日本の『伝統行事』は形の上では伝統を踏まえるように見えて、実は現実の季節感を完全に喪失しているものも少なくありません。
伝統を重んずる神社仏閣などで、旧暦を守ってお祭りを行うところも少なくありませんが、日本全国の商圏を対象とするブームとしては、暦の上での必然性を欠いている。
元来どうしてその時期にこのお祭りを行ったのか、その必然性が感じられないまま、カレンダーが3月3日となると、なぜだか人形を出してきて飾ったりして「女の子のお祭り」である、となる。
なぜそうなのか?
理由を問わない形式遵守の伝統という、日本では随所で見られる「先例墨守」の典型のようなことに、このお祭りもなってしまっている。
現実には旧暦の3月、つまり現在の4月初め、新入学の時期には桜のみならず桃の花も咲いているわけで、ここで「桃の節句」は祝われていたわけです。
ではどうして「桃の節句」に人形を飾るのでしょうか?