TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉の微妙なねじれで発生した「著作権保護期間の70年延長」が、日本でも実施されることが報道されました。
どういうことでしょうか?
2018年の時点で考えてみます。1967年以前に亡くなった作家や音楽家の作品に関する著作権は、従来の「保護期間50年」であれば失効してしまいます。例えばジャズ・ミュージシャンのジョン・コルトレーン(1926-67) の著作権は、元来なら今年切れていたことになる。
広辞苑の編者である新村出・京都大学名誉教授(1876-1967)も没後50年でおしまいというルール、バカヤロウ解散などの逸話も残しながら戦後日本の基礎を築いた吉田茂(1878-1967)も没後50年終了。
これが「70年延長」によって2037年まで有効になる、ということでもあります。
やや微妙に思うのは、例えば1948年に亡くなった人の権利は、従来1998年にタイムアウトしていたわけで、この70年化で突然戻すという話にはできないでしょう。
分かりやすい話が、太宰治(1909-1948)の作品。すでに20年前に基本的なコピーライトは切れ、晴れてフリーな古典となっていたわけで、いまさら生臭い著作利権に引き戻そうとしてもそうはいきません。
作家の菊池寛(1888-1948)、漫画家の岡本一平(1886-1948)、憲法学者の美濃部達吉(1873-1948)、世界に目を向ければ映画監督のセルゲイ・エイゼンシュタイン(1898-1948)からインドの指導者マハトマ・ガンディ(1869-1948)まで、この年に亡くなった人の諸権利はとっくに消滅して、すべて「古典」になっています。
ちなみにA級戦犯の処刑があったのもこの年の12月23日のことでした。