効果はあるのか? ないのか?

 私は10年ほど前から複数の企業や病院等で実際にほめる取り組みを行い、その効果を測定した。その結果、ほめられると自己効力感や挑戦意欲、内発的モチベーション、処遇への満足度などが高まることが明らかになった(拙著『承認とモチベーション』同文舘、2011年)。

 それ以外の効果もある。人はほめられたら、ほめてくれた相手に対して感謝し、好意を抱く。そして、何らかの形でそれに応えようとする。それが人間関係をよくするのである。

ほめる習慣づくりが第一

 では、どのようにほめたらよいのか?

 私は、あまり深く考えず「ありがとう」「えらい」「スゴい」という3つの言葉を発するように勧めている。相手が何かをしてくれたら「ありがとう」と言えばよいし、決まったこと、たとえば新入社員なら毎日遅刻せずに出勤していたら「えらいね」と言えばよい。そして特別なこと、たとえば部下が仕事をいつもより早く片づけたとか、自分から提案をしたようなときには「スゴい」と言う。

 ちなみにこの3語は、私が学生や社会人に行った「やる気が出た言葉」アンケートの結果に基づいている。

 最近はほめることが大切だという認識が浸透してきたが、実際にほめるとなるとなかなか難しい。急にほめ始めるのは不自然だし、どのようなほめ方をしたらよいか分からないという人も多い。たしかに最初から、相手の長所を見つけ、的確なほめ方をしようとするとハードルが高すぎる。

 だからこそ、簡単に口に出せるこの3語を使えばよいのである。そして、普通にほめ言葉が口に出せるようになったら、ほめる内容を相手によって変えたり、ほめ方を工夫したりすればよい。このように初級篇をマスターしてから上級篇に移ると無理がない。