このところ、巷では、「ムサンキングは勧められない」というドリアン販売業者も出て来て、マレーシ人の友人に聞くと、「ドリアンを食べた後、以前はハエやアリが寄ってきたが、今では食べかすをほっておいても、虫一つ寄ってこない」という。
筆者もジャングルのオランアスリ(原住民)から買った完熟のムサンキングに一目ぼれ、というか、“一味ぼれ”。シーズンが来ると、いただくが、ムサンキングの本来の味に今シーズンは出合っていない。
ナジブ首相は中国へドリアン外交
しかし、そんな国民の心配をよそに、マレーシア政府は、新たな外交手段を見出したようだ。ドリアン外交。
昨年、北京で開催された「一帯一路国際会議」でナジブ首相は、マ中国交43周年を記念し、中国人が愛して止まないドリアンの王様、ムサンキング43個を手土産として贈呈。
マレーシアから中国への生のドリアン輸出は禁止されているが、中国政府はゴーサインの「特別許可」を出した。「双方のドリアンへの熱の入れよう」が露呈した象徴的なドリアン外交が展開された。
中国はマレーシアにとって最大の輸出先であり、マレーシアは東南アジア諸国連合10カ国の中で、中国からの財・サービスの輸入が最も多い。
これまで、ニュージーランドの粉ミルクなどの乳製品(参照=http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49725)、フィリピンのバナナなどが例に挙げられるように、中国経済に依存した結果、自国産業が弱体化され、一方、中国はその弱みを手段として、外交舞台でブーメラン攻勢し、中国の“属国化”にする一つの手段として、貿易関係を築いてきた。
「ドリアン外交」がその二の舞を踏まないよう、心から願ってやまない――。