iPhoneアプリを用いることで、既存の臨床研究と比較して非常に大規模かつ多彩な被験者のデータを集めることができる。
その一方で、被験者がこのアプリ自体に興味を持って参加した人に限られていることから、いわゆる罹患率の算出には適していないという課題もあるという。
新たな取り組みとして、今年11月末に同アプリの英語版「Dry Eye Rhythm」を米国で提供を開始した。
世界では10億人以上が罹患していると推測されているものの、これまで世界規模の疫学的調査は行われていない。そこで、猪俣さんは 同アプリを用いて世界からデータを集めて解析しようと試みる。
ちなみに順天堂大学医学部は、アップルの「Research Kit」を使ったアプリを国内の医療機関では最も多く提供し、パーキンソン病、ロコモティブシンドローム、喘息、インフルエンザの研究に生かしている。
猪俣さんは、花粉症の季節に間に合うように、「アレルサーチ」という花粉症の重症度の動向などを地理的分布で把握するiPhoneアプリを準備中だ。
結膜炎の画像データもiPhoneカメラを用いて収集するという。将来的には、人工知能による診断プログラムの開発と花粉症対策専用デバイスの開発も視野に入れている。
こうした外来での診察では得られない、一般の人の日常生活に関するデータを大規模で集める研究から新しい知見を得ようと意欲を見せる。
日常生活に研究対象を広げ予防の意識を育てる
猪俣さんは、2012年から3年間、米ハーバード大学スケペンス眼研究所に留学し、その間、ボストン大学「Questrom School of Business」でMBAを取得した。
臨床の現場と経営に視野を広げ、当時の米国ではすでに研究開発が進んでいたデジタルヘルス分野に着目し、帰国後は医療におけるIoT(モノのインターネット)にも軸足を据える。
2016年に、医師や研究者、企業が連携するプラットフォームとしてIoMT学会を立ち上げ(IoMTはInternet of Medical Thingsの略称)代表理事を務める。