政治には、緊張感が必要である。それは野党にとってだけではなく、与党にとっても大事なことである。緊張感がない政治は国民の政治への関心を遠ざけることになってしまうからだ。

 日本では1946年以降の戦後に、27回の総選挙が行われているが、投票率が70%を超えたのが14回、60%台が8回、50%台が5回となっている。投票率が初めて50%台に落ち込んだのは96年の総選挙である。この選挙は、中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に選挙制度が変更されたものだったが、戦後、初めて投票率が60%を割り込んだ。このときは、前回総選挙で自民党が野党に転落し、細川護熙連立政権が誕生したが、連立勢力内の対立によって瓦解し、自民党が政権を取り戻していた。しかし、新進党など野党に対しても、自民党など与党に対しても、国民は大きな期待を抱けなかった。このことが低投票率につながったと思われる。

 そして、最近3回はいずれも60%台を割り込み、59.32%(2012年)、52.66%(2014年)、53.68%(今年)となっている。民主党が野党に転落して弱小政党となり、自民党に対抗できる政党がなくなってしまった結果である。森友学園や加計学園問題も、この間に発生した。安倍晋三首相の傲慢な姿勢もこの間に顕著になった。

“下手をすれば野党に転落する”という恐怖感を与党が喪失すれば、傲慢になってしまうことは避けがたい。政権を展望できない野党に、多くを期待することができないのも当然である。与党にお灸をすえようとしても、その選択肢がない。だから多くの有権者が投票を棄権するのである。