今回の選挙は、期せずして日本の財政における分水嶺になるかもしれない

 解散総選挙は与党圧勝という形で終了した。選挙戦序盤から与党有利という報道が出ていたので驚きはない。経済政策についても現状維持となる可能性が高く、市場に大きな混乱は生じないだろう。

 希望の党が、内部留保課税という衝撃的な政策を打ち出した反動もあり、現状維持の安心感から株高が進む可能性も高くなってきた。だが中長期的に見た場合、今回の選挙が日本経済にとって大きな転換点となる可能性があることは否定できない。

8%への消費増税で発生した駆け込み需要と反動減

 今回の選挙戦は争点がはっきりしないものだったが、経済面ではやはり消費増税の是非ということになるだろう。与党は消費税10%への増税を実施する代わりに教育の無償化を打ち出す一方、希望の党は10%への増税凍結を宣言した。

 消費増税は与党にとって常に鬼門とされている。前回、2014年4月から消費税が8%に増税された際には、結果的に経済が大きく失速してしまい、消費税をタブー視する雰囲気が広がった。

 本来であれば、増税分の歳入は政府支出を通じて国民の所得につながるので、景気に対してはニュートラルに作用するはずである。だが経済の基礎体力が弱っている時に増税を実施するとマイナスの影響が大きく出ることがある。

 日銀は2013年4月から、大量に国債を購入する量的緩和策を実施し、市場に対してインフレ期待の醸成を働きかけた。量的緩和策のスタート直後は、消費者物価指数(「生鮮食品を除く総合(コア指数)」)がプラスに転じるなど順調に物価が上昇するかに見えたが、消費税が8%に増税された直後の2014年5月を境に物価は失速を開始。2016年に入るとマイナスの月も目立つようになった。