「中国海軍が航空母艦を配備する」という展望は、このところ米国と日本両方の安全保障の関係者たちの間で懸念をもって語られてきた。

 つい近年まで小規模の沿岸パトロール艦艇グループにすぎなかった中国海軍が、あっというまに遠洋海軍へと拡大し、「パワープロジェクション」(遠隔地への戦力の投入)の代表とされる航空母艦までを保有するようになる。

 これが実現したら、中国と安保上の利害が一致しない側にとって重大な脅威である。中国と安保上の利害をぶつからせる国の筆頭は、わが日本でもあるのだ。

 この「中国が空母を配備」という展望が、ついに米国の国防総省当局でも現実の見通しとして語られるようになった。いよいよ中国の空母登場という事態なのである。

 12月中旬、米国防総省のシンクタンク「国家戦略研究所(INSS)」が中国海軍の作戦についての報告を発表した。この報告で、中国共産党首脳が南シナ海の領有権防衛などに航空母艦が必要だと見なし、すでにその配備を決めているという情報が明らかにされた。

 さらに同報告は、中国が数隻の空母を保有する見通しを述べ、その場合にはアジア地域で米国や日本への脅威が高まると警告している。

 国防総省直轄の研究機関が「中国の空母」の配備を明言したことは、日本側としても注視せざるをえない。

国防総省の付属機関が中国の空母登場を確実視

 この報告は「中国の域外海軍作戦」と題され、中国海軍が東アジア、西太平洋地域を越えてどのような戦略を目指すかを分析したものである。70ページほどの長文の報告で、中国海軍の沿岸や領海をはるかに越えた遠洋(域外)での作戦の能力や意図に、立体的な光を当てている。

 同報告によれば、中国海軍にとって「航空母艦の攻撃艦グループと空母航空力」は遠隔地での作戦能力を高めるための手段の1つであるという。それを踏まえて同報告は、中国共産党首脳がすでに空母1隻は不可欠と見なしており、近くその旨の公式発表をする、との予測を明らかにした。