井上 講座を通じたワーキングマザー本人のスキルアップもありますが、周りの企業に向けた取り組みも大切だと考えています。企業で女性活躍推進を行っていたとしても、それが本当に女性社員の方々の悩みを解決できるものになっているのかどうかは、なかなか見えていないのではないかと思うんですね。なんとなく「女性ってこんな感じだよね」と話していても、埒があきません。

 ワーキングマザーがどんなことに悩み、管理職になるにあたってどんな悩みを抱えているのか。女性の声をデータとして明らかにすることで、企業としてどんなサポートをすべきなのかも見えてくるはずなので、女性の声を集めたオープンナレッジプラットフォームを作る取り組みも並行して行っています。

──そもそも企業としては、女性の管理職を増やしたいと考えているのですか?

井上 そうですね。女性活躍推進法で301人以上の企業に対する義務づけがありますし、女性の活躍推進に向けた行動計画の提出率が100%に近い割合になっていたので、企業として何かしらの行動を起こそうとしているのは間違いないと思います。ただ、それにワーキングマザーがついて行っているかというと、疑問が残りますが。

女性活躍を阻むのは女性自身の思い込み

──女性の管理職が増えない原因は、どこにあると思いますか?

井上 アクセンチュアでは、キャリアカウンセラーとは別に、管理職候補一人ひとりに指導役の管理職がついて、その成長をサポートするスポンサー制度があるのですが、日本企業でそういった話はあまり聞かないので、女性のキャリアデザインについて考える土壌が整っていないのかもしれませんね。

大洲 海外ではメンタープログラムを提供している会社がありますが、日本ではあまり聞きませんよね。女性活躍というと、なぜかロールモデル論のようなわけのわからない定性的なもので語られがちですが、私たちのプロジェクトメンバーの中にはロールモデルが必要だと感じている人が1人もいなかったんです。女性のマインドを変えるために必要なのはロールモデルではなく、もっと別の何かなのではないかと。しかもそれは企業のステージや規模、業種などによって傾向が違うのかもしれません。

 なぜ私たちが定量的なエビデンスにこだわるのかというと、女性活躍推進施策の意思決定権は男性にあるために、よくわからないまま“ふわっとした施策”に落ち着くことが多いんです。男性にとっては他人事だから、本気度も高くありませんし。だからこそ、そんな男性に向けたヒントになるような女性の声を集めたファクトデータが必要だと考えています。

事業活動で培ったノウハウを活かして、就業や起業に関わるスキル構築の機会を提供するアクセンチュアの社会貢献活動「Skills to Succeed」。Work Smarter!は日本法人が取り組むテーマのひとつ“人材ダイバーシティの促進”に属する