今週は出張で久し振りに欧州に来ている。イタリアでのスピーチと英国での情報収集が主な目的だったのだが、今さらながら欧州と日本での対中国認識ギャップの大きさには驚かされた。
ちょっと悲しい話になるが、今回は欧州が中国と日本をいかに見ているかにつきご報告したいと思う。
中国関係行事は常に満員
イタリアでは日本関係シンポジウムのスピーカーの1人として講演させてもらった。薄々感じてはいたが、今回の主催者側の発言には少なからずショックを受けた。
「本日はどうにか満席となったが、人集めには結構時間がかかった。これが中国関係であれば、発表と同時に申し込みが殺到するのだが・・・」
さらに詳しく聞いてみると、近年中国については政治、経済とも非常に関心が高く、特にシンポジウムなどには多くの若い学生が熱心に参加するという。これに対し、テーマが日本である場合、関心は昔ほどではなく、学生よりも中高年の参加者が多いらしい。
「イタリア人は日本が大好きなんだけど・・・」と主催者は申し訳なさそうに弁解していた。確かに、言われてみれば聴衆の中に若い人は少ない。
会場全体も心なしか活気がないように思えてくる。内心覚悟はしていたことだが、欧州で日中の差がこれほど広がっていたとは正直思わなかった。
状況は翌日近くの大学で開かれたシンポジウムでも同じだった。キャンパス内での行事にもかかわらず、学生の聴衆は数人しかいない。
内容的にも、日本は失われた10年から抜け出せない、イタリア経済も没落しつつある、などといった実に景気の悪い話ばかりだった。
欧州で存在感を増す中国
もちろん学生を責めることはできない。今や欧州には数十万人の中国人がおり、中国企業が活発に活動していると聞く。
中国政府はソブリン危機を抱える欧州の中小国を積極的に支援し、中国系銀行は欧州でも盛んに投資・融資を行っている。学生の関心が中国に向かうのも当然なのだ。