料理は「段取り力」を養う。

 人を雇う際、必ずする質問がある。

「料理やお菓子作りはなさいますか?」

 別に料理やお菓子を作ってもらおうという気はない。「段取り力」を計るのにこれほど簡単な方法はないからだ。

 たとえば、晩御飯に豚カツとキャベツの千切り、味噌汁、漬け物、ご飯を出すとしよう。どのおかずも熱々でシャキシャキの状態で家族に食べてもらおうと思ったら、どの食材をどのタイミングで刻み、調理すればよいか、段取りをしっかり考えなければならない。

 料理をしたことがない人だと、これがなかなかうまくいかない。お味噌汁を作ってから豚カツを準備し、豚カツを揚げ終わってからキャベツを刻み、「あ、ご飯炊くの忘れた」というのがしばしば。おかずのどれかは冷めきっていたり、食べ頃を逃していたり。

 料理は、どのおかずも一番美味しいときに、同時に提供することが大切だ。そのためには、どの順番で仕事を片付けていったらよいかを、同時並行的に進める「段取り力」が必要だ。

仕事を進める「段取り力」

 この能力は、おしなべて女性の方が高い。男性は、料理が好きでも一品しか作らない人も多い。こだわりのラーメンとかそばとか。これではいまひとつ、段取り力がつかないらしい。ひとつのことに集中しているときは他のことに目をくれる余裕がなく、同時並行で仕事を進めることはできなかったりする。

 もちろんこれは、女性でもできない人はいる。ただ、女性はやはり料理をすることが多いためか、比較的、段取り力を鍛えている人は多い。

 料理で鍛えた段取り力があると、同時並行で仕事を進めるのがうまい。空いた時間に別の仕事を組み込み、入れ子状に高密度に仕事を処理する。それでいて無理がない。