韓国のサムスングループが、2010年12月、社長を含む役員人事を発表した。最大の注目は、李健熙(イ・ゴンヒ)サムスン電子会長(68)の長男である李在鎔(イ・ジェヨン)氏(42)が社長に昇格したこと。
長男が社長に就任、でもすんなり継承とはいかず
日本では、「創業者の孫が社長に昇格、3代世襲が実現した」との報道が多い。ただ、李在鎔氏への継承作業はこれからが本番と見るべきだろう。
サムスングループの後継者の座を固めるには3つの大きな課題が待っているからだ。
李在鎔氏の社長昇格は、グループ内外では規定路線だった。父親である李健熙会長は、今年秋以降、「サムスングループは若返りを図るべきだ」などの発言を繰り返し、サムスン電子副社長だった李在鎔氏の昇格を示唆していたからだ。
だが、今回の昇格人事は、例えばトヨタ自動車の豊田章男氏(54)が2009年に社長に就任した場合とはかなり異なる。
豊田氏の場合、豊田家出身者としてトヨタ自動車の経営トップになったと言えるが、李在鎔氏の場合、社長就任は経営継承作業の一環に過ぎないからだ。
10人も社長がいるサムスン電子
それはなぜか。「社長」という位置づけが、韓国の財閥では日本とはかなり異なるためである。例えば、サムスン電子には10人以上の「社長」がいる。社長といえども経営トップではないのだ。
サムスン電子の経営トップは、大きな方針については、李健熙会長であり、実務面では今回の人事で副会長に昇格したCEO(最高経営責任者)の崔志成(チェ・チソン)氏(59)。この体制は今回の人事でも全く変わらない。
李在鎔氏は、数多くの社長の仲間入りを果たし、本格継承に向けてさらに経営について学ぶ立場になったと見るべきだ。
もちろん40代前半で社長に昇格したことは、李在鎔氏が、父親である李健熙氏を継いでグループ総帥になる大きな一歩であることは間違いない。だが、そのためには、3つの課題を乗り越える必要がある。