近年の米韓関係を知る人間からみると、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の登場はどうしても廬武鉉(ノ・ムヒョン)政権の黒い影を思い出さずにいられない。
2003年2月に韓国の大統領となった廬武鉉氏は「反米、親北、反日」の志向を濃くにじませていた。長年の同盟国である米国とは距離をおき、北朝鮮に接近し、日本には激しい嫌悪や憎しみをみせるという姿勢が顕著だった。
廬武鉉政権の態度に怒った米国
廬武鉉大統領は就任演説でも中国などとの「北東アジアの繁栄の共同体」をうたい、北朝鮮もそこに含みかねない態度をちらつかせた。一方、朝鮮戦争で韓国を救った同盟相手である米国の名は挙げなかった。
廬大統領は米国に対して、「韓国は北朝鮮や中国との間に立つ『仲介者(バランサー)』である」と性格づけた。そのくせ有事には米軍に米韓同盟に基づいて韓国を防衛することを求めた。
米国の当時のジョージ・W・ブッシュ政権は強く反発した。政権内部からも議会でも激しい非難が起きた。
共和党ロナルド・レーガン政権で国家安全保障担当の大統領補佐官を務め、ブッシュ政権にも近かったリチャード・アレン氏は、次のように廬武鉉政権を批判していた。「廬政権は、北朝鮮の核武装を阻もうとする米国の政策に反対し、米国と北朝鮮の両方に譲歩を求めています。そんなシニシズム(冷笑的態度)は米韓同盟を侵食します」。