(文:コーチ・エィ 市毛智雄)
行動経済学に「ナッジ」という概念があります。 「ナッジ(nudge)」とは、「ひじで軽くつつく」という意味の英語で、行動経済学では「人に『良い行動』をとらせようとする戦略」として知られています。
欧米の公共政策にも取り入れられ、英国のデイヴィッド・キャメロン前首相が発足したプロジェクト「ナッジユニット」では、「市民の多くが期限内に税金を納めています」という簡単なメッセージを伝えるだけで、期限内に税金を納める人が増え、税収が大幅に増加しました。
「人々の行動を良い方向に変える一番効果的な方法は、態度や行動に『大きな変化』を求めるのでなく、『ほとんど気づかないくらいにささやかな方法』で誘導することなのではないか?」という考えを基に発展したこの理論は、私たちが日々発する「問いかけ」のヒントにもなりそうです。
「ナッジ」な問いかけとは?
「相手が気づかないくらい、ささやかに」行動を促進する「問い」とは、どういうものでしょうか。
イメージとしては、問いかけられた相手が身構えることなく、気軽に答えたくなったり、あるいは行動したくなったりする問いかけと言えます。
世界的に有名なデザインコンサルティング会社のIDEOでは、新しいアイディアを紡ぎだす際には必ず、「How might we?(どうすればできそうか?)」という3つの単語からなる問いかけからスタートするそうです。
「How should we?(どうすべきか?)」でもなく、「How can we?(どうすればできるか?)」でもありません。