【第1回】
今、日本の「教育」が行き詰まっている。日本の高度成長を支えた、「正解」をいかに早く覚え、再現するかという従来の教育は、「答えのない時代」を迎えた今、うまくいかなくなった。日本の国際競争力を高める人材を育成する上で、障害となっているものは何か。21世紀の教育が目指すべき方向は何か。
本連載では、世界からトップクラスの人材が集まる米国、職業訓練を重視したドイツ、フィンランドの「考える教育」など、特色ある教育制度を取り入れている先進国の最新動向から、日本の教育改革の方向性を導き出す。
高度成長期の教育は「大量生産型」
今、日本の国家戦略を考える上で一番大切な問題は「教育」です。世界に通用する人材をいかに育てるか。その意味で、日本の教育は、大きな問題を抱えています。
明治時代、日本は欧米との国力の差を埋めるために、文明開化、富国強兵の旗印の下、教育に力を入れました。当時の日本は非常にオープンで、“Boys, be ambitious”で知られるウィリアム・スミス・クラーク博士 など外国人をどんどん招聘し、日本の外からいいものを取り入れようとしました。
第二次世界大戦後はスローガンを変え、工業国として加工貿易で発展していくことを目指しました。これに伴い、教育方針も大きく変わりました。クオリティの高い人材を一斉に育て産業界に提供する、いわば「大量生産型」です。このやり方が大成功して、日本は世界第二の工業国家になりました。
米国のように「個」を重視する教育をしていたら、これほど効率よく「工業国家日本」を築くことはできなかったでしょう。