1週間のワシントン出張を終えて、先週末ようやく帰国した。米国の対中政策が最近変化しつつあることは前回お話しした通りなのだが、帰国後、何とニューヨーク・タイムズに似たような記事が出ていたことを知り、愕然とした。

 10月26日付のこの記事を当日ワシントンで読んでいれば、関係者にもっと突っ込んだ「取材」ができたのに、と内心ガッカリしたものだ。

 しかし、今は気を取り直し、やはり先週聞き込んだことは決して間違いではなかったのだ、と自分に言い聞かせている。

 それにしても、最近米マスコミでは中国に対する厳しい論調が多くなったような気がする。特に印象的だったのは、帰国の日に飛行機の中で読んだ10月29日付ワシントン・ポストの1面トップ記事だ。今回はワシントン・ポストという新聞の正しい「読み方」について書いてみたい。

美しい太湖の環境汚染

中国太湖、汚染された排水に最大15億円の罰金

アオコの発生で一面緑に染まった中国の巣湖〔AFPBB News

 記事の概要は次の通りだ。

 上海の西約100キロに「太湖」という湖がある。北岸の宜興市周鉄鎮に住む呉立紅(42)は1990年代から太湖の水質悪化を告発し環境保護活動を続けてきた。

 2005年にはその業績が認められ、全人代(全国人民代表大会)から「中国十大民間環境保護傑出人物」の1人に選ばれた。

 その呉立紅が2007年突然逮捕され、詐欺罪などで3年の実刑判決を受ける。同年、中央政府が決めた「国家環境保護モデル市」に内定した宜興市の幹部にとって、同市の環境行政と汚染企業に対する告発をやめようとしない呉が邪魔になったからだ。

 太湖の水質汚染はますます深刻になった。北部沿岸では工場の未処理排水で青緑色のアオコが異常繁殖し、卵が腐ったような悪臭が漂う。