中国は南シナ海の南沙諸島の7カ所を埋め立て軍事基地化したが、西沙諸島に加え中沙スカボロー礁(Scarborough Shoal) に軍事拠点を設ければ強力な軍事拠点トライアングルが構築され南シナ海を自国の完全なコントロール下に置くことができ、また大陸沿岸部の軍事要部の安全を期し、西太平洋への軍事力投射拡大せんと企図実現が可能になる。

 しかし、同岩礁はフィリピンのルソン島からわずかかに220キロ(これは東京から三宅島、房総半島南端から八丈島の位置で)そのEEZ(排他的経済水域)内にあり米比軍基地のフィリピン本島から目と鼻の先に位置する。

 中国は既に実効支配し工事を始めているがもし軍事基地化することになれば、米比軍は安全上決して放置できないものがあろう(ドゥテルテ比新大統領の気まぐれが心配だが)。

 一方、中国は日本の固有の領土である尖閣諸島に対しても執拗に自国領だと主張し、領土に組み入れた(1992年制定の領海および接続水域法)。

 最近(さる8月上旬)には武装民兵乗り組みの400隻もの大漁船団を伴う海警巡視船10~15隻(注)をその接続水域ばかりか領海に不法侵入を繰り返えさせ、その恒常化による実力支配と尖閣奪取に対する日本と米国の対処能力とその意志を探っている。

 とりわけ米国軍事力の脅威を感ずる中国は、「米政権が尖閣は日米安全保障条約適用地域と宣言しながらも各界で米国軍の出動を否定する主張のある」米国の真意と、日本の安倍晋三政権が国民の強い戦争嫌悪意識の中でどこまで強い決定が可能か、そして日米両軍の島嶼奪回作戦能力の実態を究めようとしている。

 もし中沙と尖閣が中国の手中に陥れば、第1列島線(日本本土~琉球~台湾~ルソン島)は軍事的機能を喪失し、中国は第2列島線(小笠原~グアム)まで軍事力を投射できA2/AD(接近阻止・地域拒否戦略:Anti- Access, Area denial)が駆使可能となり、米国のアジアにおける支配力は大きく傷つけられる。

 中国外交はしたたかである。

 前記のように日本は満洲事件を国際問題化され、国際連盟で日本の立場が否定されると単純に脱退して孤立化したが、中国はチベット支配も内政問題だとして他国の関与の道を閉ざし、南シナ海の領有管理権が国際仲裁裁判所で否定されても、日米などと鎬を削りながら自国の主張を変えずその国際的支持獲得と米国との関係悪化避ける道を探し、かえって中国を大国として認めよと「新大国関係」を迫っている。

 しかし、中国がもしこの2大懸案に手をつけ、日米比3国が公約通りの意志で対抗せんとし米国が第2のハル・ノートを中国に突きつければ極めて重大な危険な事態が発生する可能性がある。

 それでも中国が武力で応じようとすればどこからも支援が得られなかった日本軍国主義の徹を踏むことになるであろう。

)この15隻は沖縄海域を担当の海保第11管区の保有巡視船14隻を上回る。来年予算で3隻新造予定だが、早急に他管区から応急増援して数の上でも劣勢にならないことが肝心だ。