パトフ・ショディエフという名前を聞いて、ぴんとくる日本人はそうはいないだろう。だが資源・エネルギービジネスの世界では、カザフスタンの鉱物資源で巨額の富を築いたウズベキスタン出身のオリガルヒ(新興財閥)として知る人ぞ知る大物だ。
このショディエフ氏、実はモスクワの大学で日本語を専攻して以来、日本に造詣が深く、在京ロシア大使館に勤務経験もある。「国際ショディエフ財団」を設立してからはロシアと日本の懸け橋としても幅広く活動している。
日本では、著名染色家、久保田一竹の着物コレクションを一括購入して話題になったこともある。
折しも日ソ共同宣言から60周年を迎える今年は、5月に安倍晋三首相がソチでウラジーミル・プーチン大統領と会談するなど、日ロ関係が大きく動く気配を見せている。そうした中、ショディエフ氏にモスクワのオフィスでインタビューした。
久保田一竹の所蔵品を一括購入して有名に
問 2012年に(美術館の破綻に伴い)染色工芸家の久保田一竹氏の着物コレクションがバラバラに売られるのを防ぐために所蔵作品を一括購入するという前例のない行動に出た後、国際ショディエフ財団は日本で名前が知られるようになりました。
最近は、財団が手がける文化、出版プロジェクトの大部分が日本、そして日ロ協力と関係しています。両国の異文化コミュニケーションはまだ、政治やビジネスの関係よりも有望に思えますね。
答 確かにそうです。財団のプロジェクトの大部分は日ロ関係に関連していて、すべてが同じ重要な使命によって結びついています。つまり、日本に関して適切かつ信頼できる情報を発信することです。
ソ連時代には、日本の伝統文化に対して関心が高まりました。1990年代後半には、ロシアで日本関係の一大消費ブームが起きました。ロシア人は数十年にわたり、魅力的な文化として日本を好んできました。
けれども今の時代の情報の質は時として、本当にお粗末なことがある。日本研究者として、私たちは一部の書籍に書かれていること、日本と日本人に関する歪んだ情報に同意できないことがままあります。
だからこそ、この数年、財団にとって重要な情報発信プロジェクトの1つが、モスクワで毎年開催される日本文化フェスティバルを後援することなのです。