メジヒリヤの旧ヤヌコヴィッチ邸(筆者撮影)

 ジョージア(グルジア)のミハイル・サーカシビリ前大統領とロシアの大富豪アブラモーヴィッチ氏に接点があることをどれだけの人が知っているだろうか。

 サーカシビリ氏は現在、ウクライナのオデッサ州で知事を務めている。2003年、ジョージアで「バラ革命」を主導し、大統領就任後に対汚職で顕著な成果を挙げてきたサーカシビリ氏は、2015年5月、オデッサ州知事に任命され、異国で奮闘している。

 一方、アブラモーヴィッチ氏は、ウラジーミル・プーチン大統領を支援するオリガルヒの1人であり、イングランドの名門サッカークラブ「チェルシー」のオーナーとして有名である。

 ロシア人モデルのダリア・ジューコヴァと3度目の結婚をしたことを知っている人もいるだろう。しかし、彼女の父親が、オデッサ経済界のドンであることはあまり知られていない。

 今日、オデッサで、サーカシビリ知事とアブラモーヴィッチ義父との間で汚職や密輸が繰り広げられているのだ。

汚職天国ウクライナ

 ユーロ・マイダン革命で放逐されたビクトル・ヤヌコヴィッチ大統領(当時)は汚職まみれであった。彼の長男は、政府の投資案件に関与することでウクライナ有数の資産家に成り上がった。

 キエフ郊外メジヒリヤに建てられた一族の別邸は、旧体制の不正蓄財の象徴として、観光名所の1つとなっているほどだ。

 旧体制の汚職はユーロ・マイダンの動機の1つだったはずだが、ヤヌコヴィッチ氏とその取り巻きが国外に去った後も汚職は改善されていない。

 最近でも、ペトロ・ポロシェンコ大統領や国立銀行総裁の関連企業がパナマ文書に登場したり、内務大臣の息子が備品発注に口利きしたり、と疑惑は枚挙に暇がない。新任のヴォロディーミル・フロイスマン首相がヴィニッツァ市長時代に行った「ファミリービジネス」の数々も広く知られている。

 トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)の腐敗認識指標(CPI)によれば、ウクライナは2013年以降、ウクライナは毎年スコアを1ポイントずつ改善しているものの、2015年時点で世界130位に過ぎず、ヨーロッパ諸国内では断トツの最下位。