10月23日土曜日、中国陝西省省都西安市にある西北大学は朝から緊張感に包まれていた。1週間前の10月16日土曜日、日本人の間では「長安」としても知られるこの地で、日本を攻撃の対象としたデモが発生したからである。
大学生を学内に封じ込めよ!
この日、デモの参加者は日本製品ボイコットを叫び、尖閣諸島の領有権を主張した。中には暴徒化する人間もいた。7000人を超える規模に膨れ上がったデモ隊は、そのほとんどを大学生が占めていた。
16日の夕方には西安市内に戒厳令が敷かれた。翌日の17日、同大学の学生は一切の外出を禁止された。「封校(フォンシャオ)」と言う。大学キャンパス封じ込め、を意味する。
日本の読者には中国の大学について少し説明が必要だろう。中国の大学はそれだけで1つのコミュニティーを形成していて、全寮制が基本。学生たちはみなキャンパス内に住み、寮、教室、食堂の間を往復して暮らしている。
学部生に対しては、平日は23時には消灯、という大学が多い。筆者が所属する北京大学もそうである。学生が外から通学してくる日本の大学と違って、封校すれば学生は外に出られなくなるのである。
西北大学の党関係者によると、17日の段階で、中央政府から地方政府、公安省というルートを通じて、次のような内部通達が届けられたという。
中国全土に向け、対日デモは違法との通達が発せられた
「昨日(16日)の対日デモは合法的な行為と認めるが、本日以降の一切のデモ・集会は違法行為とみなす。仮に行った場合には、法に基づいて粛々と処罰する」
この通達に、大学関係者は焦りに焦ったようだ。もしデモが発生すれば自らの責任問題に関わってくるからだ。次の週末に当たる23日、西北大学は朝からピリピリとした緊張感に包まれていたのには、こうしたわけがある。
この17日以降のデモを違法行為とするという通達は、「対西安だけではない。全国ネットで出された通達だ」と、北京の公安関係者が筆者に暗号で教えてくれた。つまり、17日以降、中国中で起きた対日デモや集会は、すべて違法行為とみなされることになった。
この通達以外にも西北大学が緊迫した雰囲気になる理由があった。読者のみなさんは覚えているだろうか。ちょうど7年前の10月29日に同大学で起きたある事件を。