ひところ仮想通貨「ビットコイン」が話題になったが、その取引所が詐欺で破産したりして、日本では忘れられた。最近では「フィンテック」の一種として、いろいろな電子マネーと一緒に紹介されているが、これは間違いだ。
ビットコインの基礎技術であるブロックチェーンは単なる電子マネーではなく、インターネット以来の革命的なイノベーションだ。今シリコンバレーで最大の話題はブロックチェーンを応用した技術開発で、多くのベンチャーが起業している。
ブロックチェーンは「分散型の台帳」
最初に、ビットコインの仕組みを簡単に説明しておこう。これはコインのような貨幣ではなく、コンピュータ上のデータである。最近ではカードで使えるものもあるので、その意味ではクレジットカードと同じようなものと考えていい。
ただクレジットカードに記録されているのはあなたの銀行口座の残高で、それが正しいことを証明するのは銀行の信用である。あなたが勝手にカードをつくって適当な金額を書き込んでも、誰もそのカードを受け取ってくれない。
これに対して、ビットコインの「口座」を管理する銀行はない。ビットコインを受け取る店なら、円の代わりに使うことができる。それが正しい取引であることを保証するのは銀行ではなく、取引データを入れたブロックチェーンの信頼性だ。
ブロックチェーンというのは、多くのブロックに分けられたデータベースである。ブロックとブロックがどんどんつなげられて保存されるのでブロックチェーンと呼ぶ。ビットコインの取引履歴は、すべて暗号化してここに記録され、公開されている。誰でもコピーして履歴を確認できるので、改ざんすると他人の保存しているデータと食い違って使えなくなる。
だから「コイン」というのは比喩で、ブロックチェーンは全世界に広がるスプレッドシートのような分散型の台帳と考えたほうがいい。この台帳はP2P(ピア・トゥ・ピア)のネットワークで共有される。
インターネットは自律分散型のオープンネットワークだから、全体の管理者はいない。これは自由な進化を可能にするメリットもあるが、セキュリティを保証できない。銀行送金は、今も大型コンピュータの閉じたネットワークで行われている。