ソフトバンクが直面した後継者問題はやがてトヨタ自動車にも降りかかる。写真はトヨタの豊田章男社長。2016年3月期の決算発表にて(写真:トヨタ自動車)

 ソフトバンクグループの孫正義社長の後継者として指名されていたニケシュ・アローラ副社長が退任した。アローラ氏の退任と孫氏の続投は、オーナー企業の後継者選定がいかに難しい問題なのか、あらためて印象付ける結果となった。

 ソフトバンクの一連の人事は、後継者問題が以前から指摘されているファーストリテイリングや、まだ先のこととはいえ、オーナー企業の筆頭格であるトヨタにも同様の問題が降りかかる可能性があることを示唆している。

孫社長の後継者にふさわしい経歴だったが

 ソフトバンクグループは6月22日、株主総会を開催し、新しい役員人事を承認した。孫正義社長の後継者として指名されていたアローラ副社長が退任し、孫氏の続投が決まった。同社の社外取締役でもある柳井正ファーストリテイリング会長兼社長や、同じく社外取締役の永守重信日本電産会長兼社長が、続投を強く後押しする発言をしていることなどから、孫氏は当分の間、同社の経営の舵取りを続けるものと市場は認識している。

 退任するアローラ氏は米グーグル出身で、2014年に孫氏が巨額報酬を提示して迎え入れた人物である。ソフトバンクは国内の通信事業に加え、米スプリントの買収をきっかけに北米通信市場への進出も試みている。また初期段階から投資していた中国の電子商取引サイト「アリババ」が上場したことから、再びネット事業を強化していくとの見方も出ていた。

 アローラ氏はグーグルのビジネス部門の責任者を務めていたが、以前はドイツテレコムなど通信会社にも在籍した経験があり、通信事業とネット事業の両方を視野に入れるソフトバンクのトップにふさわしい経歴に見えた。ソフトバンクはアローラ氏に対して高額な報酬を支払っており、その金額は、2015年3月期は165億円(契約金含む)、2016年3月期は80億円となっている。孫氏の期待がいかに大きかったのかが分かる。