この10月、海上自衛隊で2隻の艦艇が進水・命名式を迎えることになった。

 1隻は2007年度計画・護衛艦「あきづき」(造船所は三菱重工業 長崎造船所)。もう1隻は2008年度計画・中型掃海艇(造船所はユニバーサル造船 京浜事業所、名称は10月25日に公開)である。

 進水したこれらの艦艇は、この後1~2年ほどかけて艤装をし、就役することになる。

ペルシャ湾で成果を挙げた木造の掃海艇

 私は、かつて自著『海をひらく 知られざる掃海部隊』の取材のため掃海艇建造の過程を追い、最後の木造掃海艇の進水式に立ち会ったことがある。

 居並ぶ海上自衛官が敬礼する中、わが子の第一歩を見送る造船関係者の視線を浴びて、行進曲「軍艦」のメロディーとともに船台を滑り、波打つ海上に放たれる姿は初々しく、非常に感動的であった。

 「掃海艇が木造?」と驚く方もあるかもしれないが、機雷の除去をするためには磁気がご法度だ。そのため、わが国の掃海艇はずっと木で造られていた。

 木造船を使用していたのは日本のみであり、まさに船大工の技が生かされていた。そこには熟練のカンや経験が不可欠の、極めて高度な技術が用いられていたのだ。

 日本で初めての海外派遣先であったペルシャ湾には、この500トン前後の小さな木造の掃海艇4隻(補給艦、掃海母艦を加えて計6隻)で赴いた。

 建造時には想定されていなかった長い航海を経て、過酷な気候条件下にもかかわらず無事に役目を果たしたことは、日本の掃海部隊の練度の高さのみならず、掃海艇建造技術の高さも世界に知らしめることになった。

 海上自衛隊幹部は、「この小さな木造の掃海艇で、片道1万3000キロもの航海をしてペルシャ湾まで行き、成果を挙げたのは誇らしいことです」と胸を張っていた。