中国の専門家の間で、中国あるいは中国経済に関する見方は大きく分かれている。「中国は間違いなく崩壊する」という見方がある一方、独裁政治が続いている間は大丈夫という見方もある。独裁ならば危機に対処する施策を確実に実施できるということのようである。
独裁政治が危機を回避できるかどうかは別の議論として丁寧に分析する必要があるが、中国の「リスク」が「クライシス」になるかどうかをここで考えたい。
リスクとは危険な状態に陥る可能性のことを意味する。それに対して、クライシスはまさに危機、あるいは危険な状態にあることを指す。
1976年毛沢東が逝去したとき、中国は統治力を失い、大きなクライシスに直面していた。それ以降、中国は常にリスクを孕んでいる。だが、本格的なクライシスに陥ったことはない。
中国は局所的なクライシスにはたびたび見舞われている。たとえば、2015年8月、天津港の薬品倉庫で巨大な爆発事故が起きた。それは関係者にとって深刻なクライシスだったが、中国全体の危機ではなく天津港の危機にとどまった。